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マラリア[私の治療]

No.5107 (2022年03月12日発行) P.41

竹下 望 (国立感染症研究所研究企画調整センターセンター長)

登録日: 2022-03-13

最終更新日: 2022-03-08

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  • マラリアは,マラリア原虫がハマダラカを介して感染することで発病する発熱性疾患である。感染後は,体内でマラリア原虫が増殖することで全身症状を引き起こし,抗マラリア薬によって治療する。主に三日熱マラリア,四日熱マラリア,卵形マラリア,熱帯熱マラリア,4つの種類に加え,近年報告されているサルマラリアの5つの種類に分類されるが,特に熱帯熱マラリアは重症化しやすく治療が遅れると死亡するため,速やかに診断し治療を行う必要がある。なお,三日熱マラリアと卵形マラリアは根治治療を行わなければ,再燃する。

    ▶診断のポイント

    マラリアを媒介するハマダラカに刺されてから10~15日で,発熱,頭痛,悪寒などの症状で発病するが,いずれの症状も非特異的であるため,インフルエンザや腎盂腎炎などほかの急性期感染症と,症状だけで鑑別することは難しい。潜伏期間を考慮して,発病日から感染が想定される時期に流行地域への渡航歴があるかを聴取することが有用であり,鑑別を要すると考える場合は,速やかに検査を実施すべきである。

    診断の際には,治療方針,重症度の評価にも関わるため,ギムザ染色した血塗抹標本における原虫の種類の特定と原虫寄生率の確認を行う必要がある。特に,診察においては意識障害や貧血の有無の評価に加えて,通常の血液検査で急性腎不全,低血糖,代謝性アシドーシスの有無を検索する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療は,抗マラリア薬の投与と,支持療法が中心である。発病後,直ちに治療する必要があるため,速やかに抗マラリア薬を投与する。治療効果をみるには,解熱をみることと,ギムザ染色した血塗抹標本の原虫寄生率の低下をみることである。

    合併症を伴わない場合は,抗マラリア薬と必要に応じて解熱薬(アセトアミノフェン)や補液による支持療法で改善することが多い。抗マラリア薬を選択する際には,薬剤耐性の問題もあることから,最新の薬剤耐性の状況を確認することが望ましい〔米国疾病予防管理センター(CDC),https://www.cdc.gov/malaria/travelers/country_table/a.html〕。

    抗マラリア薬としては,アルテメテル・ルメファントリン配合薬,アトバコン・プログアニル塩酸塩配合薬で治療を行う。重症マラリアと診断された際には,キニーネ注の適応となるが,国内では承認されていないため,熱帯病治療薬研究班薬剤使用機関(https://www.nettai.org/)に紹介して治療を行うことが望ましい。入手までに時間がかかる場合は,アルテメテル・ルメファントリン配合薬を投与する。

    また,三日熱マラリア,卵形マラリアにおいては,肝細胞内の原虫に対する治療として,プリマキンリン酸塩を投与することで,再発を防ぐ必要がある。なお,プリマキンリン酸塩を内服する際には,G6PD欠損症がある場合は,本薬を内服することで,溶血性貧血を起こすことがあるため,G6PD活性を確認することが望ましい。G6PD欠損症は日本人では0.1%と頻度は低いが,他国では頻度が高い地域もある。

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