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軽度痔瘻でも発癌リスクを考えて手術すべき?

No.5106 (2022年03月05日発行) P.46

佐々木 巌 (大阪肛門科診療所院長)

佐々木みのり (大阪肛門科診療所副院長)

登録日: 2022-03-03

最終更新日: 2022-03-01

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痔瘻の手術適応を教えて下さい。症状が軽度でも発癌リスクから,手術が望ましいのでしょうか。
また,手術の際の術式の選択と,経過についてもお願いします。(千葉県 K)


【回答】

 【痔瘻は良性疾患なので,患者が希望する場合にのみ手術を行う。ただし,根治するには手術が必要。また,痔瘻癌を比較的早い時期に発見するには手術が必須】

まず,痔瘻は良性疾患なので,患者が希望する場合にのみ手術を行います。その際,痔瘻自体は軽度であっても不快感を強く感じる患者もいることを,考慮する必要があります。

「痔瘻には発癌リスクがあるため,軽度の痔瘻でもすべて手術適応」という意見もありますが,筆者はこれをオーバーサージェリーと考え,患者自身に手術するかどうかを選んでもらっています。

その際の説明のポイントは,①「痔瘻を根治するには手術が必要」,②「痔瘻癌が心配なら手術を考慮すべき」という2点です。

さらに手術治療を希望しない患者に対しては,③「定期通院は,痔瘻癌の早期発見にはつながらない」という点も,追加が必要です。

③について,もう少し解説します。痔瘻癌は,痔瘻手術中の生検で発見されるケースが多数を占めます。そして,痔瘻癌の組織は,肉眼的には通常の痔瘻とほとんど変わりがありません。また,一度の生検では診断できず,再発による複数回のチャレンジで診断に至るケースも多数あります。つまり現時点では,「痔瘻癌を比較的早い時期に発見するには,手術が必須」と考えるのが妥当です。

痔瘻患者の心理としては,「定期通院していれば,痔瘻癌になったとしても,早期に見つけてもらえる」という期待をしがちなのですが,この期待にはまったく答えられないことを,明確に繰り返し,説明しておく必要があります。

筆者は以上の点を考慮し,無症状の患者には上記①〜③を説明して理解してもらい,患者自身が痔瘻癌のリスクを受け入れるならば,手術はしていません。

排膿など症状がある患者で手術を希望しない場合は,通院のたびに繰り返し,上記①〜③を説明し,自己責任による選択であることを確認し,カルテに記載しています。

なお,コロイドの産生(透明のゼリー状分泌物)があれば痔瘻癌を強く疑い,専門医へのコンサルトを含む必要な対策を行って下さい。

次に術式ですが,シートン法を採用するのが安全です。材料はアラビアゴム素材のものを使用します。切断のスピード・疼痛対策の観点から,医療用のシートン用ゴムを使用するのが無難です。手術時のループの長さは,少したるむ程度に長め・ゆるめにするのが原則です(ただし,長すぎると疼痛が強くなります)。

最後に経過について,初期の2週間は中等度の疼痛があるケースが多いのですが,疼痛は徐々に軽減します。術後に強度の疼痛が2週間以上継続する場合は,ゴムが正しい位置に入っていない可能性がありますので,ゴムの入れ直しや,専門医へのコンサルトを考慮して下さい。

ゴムがスムーズに動くようになったら,術後2週間を目安に,外来でシートンを締め直します。通常,麻酔は必要ありません。締め直しのときのループの長さは,わずかにたるむ~ぴったりくらいの長さにします。その際,緊縛にならないように注意して下さい。以後1~2週間に一度,ゴムがたるんだときに締め直しを行います。

締め直しをすると,手術後と同程度の期間で疼痛と軽快を繰り返しますが,締め直しによる疼痛は初回ほど強くありません。通常は完治まで3~6カ月かかります。

【参考】

▶ 隅越幸男, 他:日本大腸肛門病会誌. 1981;34(5): 467-72.

▶ 杉田 昭, 他:日本大腸肛門病会誌. 2008;61(10): 994-7.

▶ 黒川彰夫, 他:日本大腸肛門病会誌. 1995;48(10): 1113-20.

【回答者】

佐々木 巌  大阪肛門科診療所院長

佐々木みのり  大阪肛門科診療所副院長

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