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【識者の眼】「診療報酬改定から見える医療の方向性とその限界」草場鉄周

No.5109 (2022年03月26日発行) P.54

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-02-21

最終更新日: 2022-02-21

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2022年度の診療報酬改定の方向性がほぼ定まった。総合診療に関連する部分をピックアップすると、大きく病診連携のシステム強化、そしてかかりつけ医機能の強化と推進に分かれるだろう。

前者については、200床以上の紹介受診重点医療機関は原則紹介受診が必要となり、紹介状無く受診する場合には定額負担が初診で7000円、再診で3000円徴収されることとなる。さらに、紹介受診重点医療機関は入院で8000円の加算が認められ、紹介・逆紹介の割合が低い場合には外来診療料は減算される。また、外来在宅共同指導料や連携強化診療情報提供料など在宅導入や病診連携の情報交換に関しても報酬が手厚くなる。アメとムチによって可能な部分にはすべて誘導を図ろうとする国の強い意志を感じる内容である。

後者については、従来からかかりつけ医機能を評価するために設定されている地域包括診療料と地域包括診療加算の対象疾患に慢性心不全と慢性腎臓病を追加して算定を容易にし、生活面の指導には看護師、管理栄養士、薬剤師が加わってよいというチーム医療の強化を図ると同時に、予防接種の情報収集と相談対応を義務化した。さらに、かかりつけ医機能を発揮する医療機関に認められている機能強化加算の要件に、専門診療機関への受診の要否の判断、受診状況の把握、健診結果の管理と相談、保健・福祉サービスの相談、時間外対応への情報提供などを加えた。いずれも、理想的なかかりつけ医機能をプライマリ・ケア医療機関ができる限り発揮するように、との期待が込められている。

いずれの方向性も適切な流れではあるが、後者については報酬を算定しない医療機関に対するペナルティーはなく、あくまでも努力した医療機関を評価する枠組みであり、診療報酬による政策誘導の限界が感じられる。国は愚直に医療側への性善説で取り組もうとしているわけである。とは言え、こうした診療報酬を算定する医療機関の数は伸び悩んでいる。ここまで優遇しても医療側が変わらない、あるいは変われないのであれば、やはりプライマリ・ケアの制度化に関する議論は避けられないのではないだろうか。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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