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どうなる?診療報酬改定─個別改定項目の議論が本格化へ【まとめてみました】

No.5099 (2022年01月15日発行) P.14

登録日: 2022-01-13

最終更新日: 2022-01-13

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2022年度の診療報酬改定を巡っては、2021年12月22日の閣僚折衝で改定率が決定した。24日の中医協総会では、診療側・支払側がそれぞれ22年度改定に関する意見を表明。今月からは個別改定項目(点数配分)の議論が本格化する。本欄では、22年度改定の改定率と大詰めを迎える個別改定項目の議論のポイントを詳報する。

2022年度診療報酬改定の改定率は、診療報酬本体プラス0.43%、薬価マイナス1.35%、材料マイナス0.02%。実質(ネット)の改定率はマイナス0.94%で決着した。診療報酬本体のプラス0.43%(国費約300億円)については、但し書きの多い改定率であることに留意が必要だ。

「プラス0.43%」には①看護の処遇改善のための特例的対応でプラス0.20%、②リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化でマイナス0.10%、③不妊治療の保険適用のための特例的対応でプラス0.20%、④小児の感染防止対策にかかる加算措置の期限到来でマイナス0.10%─の対応が含まれる。①~④の合計プラス0.20%分を除くと、通常の本体改定分はプラス0.23%と捉えることができる。

0.23%の内訳は、医科がプラス0.26%、歯科がプラス0.29%、調剤がプラス0.08%で、各科の技術料は医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3の比率が維持された。薬価の改定率マイナス1.35%には不妊治療に使用する薬剤を新たに保険適用するための対応プラス0.09%が含まれる。

 

日医はプラス改定を「率直に評価」

社会保障・税一体改革がスタートした2012年度以降の医科本体、薬価等、ネットの改定率の推移をみると、今回の医科本体の改定率は2016年度のプラス0.49%を下回る。ただし、2014年度改定は消費税対応分を除くと実質プラス0.1%であり、それよりは医療機関の経営状況に配慮した改定という見方もできる。

2022年度は日本医師会が中川俊男会長の体制となり初めて迎える改定。前任の横倉義武氏が安倍晋三前首相や麻生太郎前財務相などとの太いパイプを持ち、政権との間で交渉を直談判できる関係性を構築していたのに対し、中川会長は岸田文雄首相との面会が実現できていないとされ、厳しい改定も予想された。中川会長は12月22日の記者会見で、今回の改定率について医療経済実態調査やTKC医業経営指標において示された医療機関の極めて深刻な経営実態が、政府・与党始め多くの関係者に理解された結果との見方を示した上で、「必ずしも満足するものではないが、厳しい国家財政の中、プラス改定になったことについて率直に評価をしたい」と述べた。

看護職員の処遇改善にプラス0.20%

2022年度改定の特徴の1つは、本体プラス0.43%のうち0.20%分が2022年10月から看護職員等の処遇改善に充当される点。対象となるのは、「救急医療管理加算」を算定し、救急搬送件数が年間200台以上の医療機関や3次救急を担う医療機関で、「看護職員等の収入を3%(月額平均1万2000円)程度引き上げる」ことを可能とする加算の新設など診療報酬上の手当てを行う形になる。厚労省は該当医療機関に勤務する看護職員を約57万人と推計しているが、この財源は看護師限定ではなく、看護補助者や理学療法士・作業療法士などのメディカルスタッフも処遇改善の対象に含まれる。配分や引上げ額などは医療機関の裁量によるところが大きく、現場の実情に合わせた対応が可能になる。

リフィル処方箋導入で再診を適正化

2022年度改定ではリフィル処方箋が導入されることが決まった。リフィル処方箋とは、医師が認めた場合に「一定期間反復使用できる処方箋」のこと。運用の詳細については、中医協の議論で詰めていくことになるが、厚労省が想定しているのは、症状の安定した高血圧などの慢性疾患患者に対し、医師が3ヵ月間程度同じ薬を処方する処方箋を発行するような形だ。リフィル処方箋の導入により、患者が薬をもらいに行くためだけの再診を削減することができ、医療費の適正化につながる効果が期待されている。改定財源を捻出するために導入が決まったリフィル処方箋だが、慢性疾患患者を多く抱える地域のクリニックにとっては経営的に大きな影響が出る可能性もある。

7対1適正化など7項目を重点的に議論

12月22日の閣僚折衝で改定率を決めた後藤茂之厚労相と鈴木俊一財務相は、2022年度改定に向け─①医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、医療機能・患者像の実態に即した「看護配置7対1の入院基本料」を含む入院医療評価の適正化、②在院日数を含めた医療の標準化に向け、DPC制度見直しなどの「さらなる包括払い」の推進、③医師働き方改革にかかる診療報酬上の措置について、実効的な仕組みとなるような見直し、④外来医療の機能分化・連携の強化に向けた「かかりつけ医機能」にかかる診療報酬上の措置の実態に即した見直し、⑤費用対効果(加算額と医療費節減額)を踏まえた「後発品の調剤体制にかかる評価」の見直し、⑥収益状況・経営の効率性なども踏まえた「多店舗を展開する薬局」の評価適正化、⑦OTC類似医薬品など「既収載医薬品の保険給付範囲」の見直し、湿布薬処方の適正化─の7点を重点的に議論することを中医協に強く要請した。

オンライン診療の評価が争点の1つ

改定率決定を受け、中医協は12月22日の総会で、個別改定項目の中で特に注目されるオンライン診療の取り扱いについても議論。大きな論点となっているのは、制度化される「初診からのオンライン診療」の診療報酬点数や施設基準、算定要件などの設定だ。また現在のオンライン診療の算定要件と11月29日に開かれた厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で取りまとめられた“オンライン診療指針”との整合性をどうとっていくかにも注目が集まる。

オンライン診療指針では、オンラインの特性を踏まえ、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はないとされているが、保険診療のオンライン診療料の算定要件では、「オンライン診療は当該保険医療機関内において行う」こととされている。オンライン診療推進に向け、対面と遜色ない診療報酬と柔軟な運用を可能にする要件の緩和などが求められている中、安全性と有効性をどう評価するかが争点となる。

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