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【識者の眼】「順天堂医院が『SOGI』アライによる対応を開始」武田裕子

No.5092 (2021年11月27日発行) P.55

武田裕子 (順天堂大学大学院医学研究科医学教育学教授)

登録日: 2021-11-15

最終更新日: 2021-11-15

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タイトルをご覧になり、何のことかと戸惑われたのではありませんか?

SOGIは、Sexual Orientation (性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字です。性的指向(どのような性別の人に惹かれるか)が同性に向かえばゲイまたはレズビアン、両方であればバイセクシュアルです。また、自身の性別の認識が戸籍上の性別と異なる場合はトランスジェンダーと呼ばれます。「アライ(Ally)」は、自分とは異なるSOGIであっても理解し支援する立場を示すものです。

LGBTQsという言葉がよく用いられますが、私たちの誰もが固有のSOGIを有しています。しかし日本には、性別を「男」と「女」のどちらかに分類して異性愛を当然とする社会規範があります。それにあてはまらない「性的マイノリティ」への偏見や差別が未だにあるため、人に知られることを恐れ、様々な困難に遭遇している方々がいます。トランスジェンダーの方は、保険証提示や待合室で名前を呼ばれる際に不審に思われることで受診をためらったり、入院の際の病衣や病室、トイレ利用で悩んだりしています。ゲイやレズビアンの方は、長年一緒に暮らす同性パートナーが家族として認められず、緊急時に同意書に代諾者として署名できなかった、臨終の場面で面会できなかったということも起きています。これらは、SOGIに関する社会のありようが、医療アクセスや健康に影響する「健康の社会的決定要因(SDH)」となっていることを示します。

 順天堂大学医学部附属順天堂医院(院長:髙橋和久)では、以前から同性パートナーを家族とみなして患者の代諾者とする体制を取っていますが、さらに、多様な性のあり方に配慮した院内環境づくりが進行中です。今年5月に、職員有志を募り「SOGIをめぐる患者・家族・職員への配慮と対応ワーキンググループ」を立ち上げました。まず多目的トイレにレインボーステッカーを掲示し、SOGIに伴う困難を減らしたい思いを表しました。さらに、LGBTQs当事者の方々をまねいて少人数の研修会を連続して開催し、意見交換を通じて理解を深め、名前の呼び方への配慮など自分たちでできることを考えました。これまでに93名が参加し、研修後に交付されたレインボーバッジを身に着けた職員のいる窓口にはレインボーフラッグを置き、「バッジをつけている職員に安心してご相談ください」と表示しています(https://www.juntendo.ac.jp/news/20211028-01.html)。

始まったばかりの順天堂医院の取り組みですが、他の医療機関にも広まってSOGIによる健康格差がなくなることを願っています。

武田裕子(順天堂大学大学院医学研究科医学教育学教授)[SOGI][LGBTQs][アライ][健康の社会的決定要因(SDH)]

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