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突発性難聴 (急性低音障害型感音難聴を含む)[私の治療]

No.5090 (2021年11月13日発行) P.41

伊藤 健 (帝京大学医学部耳鼻咽喉科学講座主任教授)

登録日: 2021-11-14

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  • 急性発症の感音難聴において,最終的に原因が特定できなかったものをまとめた疾患概念である。現時点では急性感音難聴の多くが診断に至らないため,実用的な疾患名ではあるものの,実際には診断がつくのを待たずに検査と同時進行で治療を行う必要がある。したがって,本稿では治療開始時点において診断が確定していない急性感音難聴一般を対象とする。また,厚生労働省難治性聴覚障害に関する調査研究班の新診断基準(2015年)で突発性難聴から除外された「急性低音障害型感音難聴」も本稿に含める。

    原因不明とは言え突発性難聴の病態としては,ウイルス感染・血流障害(内耳・内耳神経の梗塞)が以前から想定されており,診断に至らない外リンパ瘻(「外リンパ瘻」の稿参照)も候補として挙がる。わが国ならびに米国の診療ガイドラインが存在するが,治療のエビデンスは十分とは言えない。経験的な予後としては治癒・改善・不変がそれぞれ1/3程度となる。めまい症状を伴った場合,難聴が高度である場合に聴力予後が悪くなる傾向がある。発症後早期の治療開始(遅くとも2週以内)が望ましい。急性低音障害型感音難聴は内リンパ水腫が原因のメニエール病近縁疾患と考えられている。

    ▶診断のポイント

    程度としては,隣り合うオクターブ間隔の3周波数において各々30dB以上の感音難聴,経過としては72時間以内に生じたもの,が新診断基準の突発性難聴に合致する。同診断基準の急性低音障害型感音難聴では,低音域3周波数の聴力レベル合計が70dB以上で,高音域3周波数の聴力レベルの合計が60dB以下となり,めまいを伴う例は除外される。患側の耳鳴を伴う場合が多い。定義から以下のような疾患を鑑別する必要があり,既知の疾患が除外されて診断が確定するのは治療中ないし治療後となる。

    主な鑑別疾患:ラムゼイ・ハント症候群,ムンプス難聴,急性音響性難聴,外リンパ瘻,前下小脳動脈(AICA)症候群,聴神経腫瘍,メニエール病

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