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【識者の眼】「デリケートゾーンのその症状、閉経後性器尿路症候群ではないですか?」柴田綾子

No.5090 (2021年11月13日発行) P.62

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2021-11-04

最終更新日: 2021-11-04

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閉経後女性の27〜84%がデリケートゾーン(会陰や腟など)の違和感、チクチクした灼熱感、排尿障害、性交痛を感じていながら、約50%がまったく治療を受けていないことが報告されています1)

閉経後性器尿路症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)は、2014年に国際女性性機能学会と北米閉経学会から提案された新しい概念で、これまで「萎縮性腟炎」と表現していたものを、会陰だけでなく尿路症状(頻尿、反復尿路感染症)や性機能低下(性交痛・性交後出血)まで拡大したものです。これはエストロゲン低下による会陰・腟・膀胱・尿道の粘膜の萎縮が原因で、治療としては保湿、エストロゲン腟剤の挿入、レーザー治療があります。

診断にあたって除外が必要な疾患は、接触性皮膚炎、カンジダ外陰腟炎、硬化性苔癬、糖尿病、子宮頸部/腟/会陰癌などです。デリケートゾーンの悩みを、患者から言い出すことは非常に難しく、更年期や閉経後、早発閉経(婦人科癌術後)、抗エストロゲン薬(乳癌のタモキシフェンやレトロゾールなど)使用中の女性に対しては、医療者からGSMについて積極的に質問する必要があります。「実は最近、女性ホルモンが減るとデリケートゾーンの違和感や性交痛が出ることがわかってきたのですが、何か困っていることはないですか?」などスクリーニング的に質問します。問診では、ナプキン使用や会陰部を洗いすぎていないか(接触皮膚炎)、カッテージチーズ様の帯下増加 (カンジダ外陰腟炎)や不正出血(悪性腫瘍)の有無を確認します。視診では、皮膚や粘膜の萎縮、発赤、色素沈着を認めます。帯下のpH(正常は4.5以下)は5.0以上が多いですが、診断に必須ではありません。

近年、市販のデリケートゾーン用の保湿剤が多数発売されています。まずは市販の保湿剤や潤滑ゼリー(リューブゼリー、K-Y®ゼリー)をお勧めし、症状が強い場合はエストロゲン腟剤(エストリール錠0.5mg/日やホーリン®V腟用錠1mg/日を1〜2週間)を自己挿入します。難治性の場合は、自費になりますが炭酸ガスフラクショナルレーザー(モナリザタッチ®、フェムタッチTM)が治療選択肢になります。更年期以降の女性の多くがデリケートゾーンの症状で困っています。閉経後性器尿路症候群では、市販薬によるセルフケアから開始できますので、ぜひ積極的に質問をしてください。20歳以降の女性には2年に1度の子宮頸がん検診も推奨されています。このキッカケに産婦人科受診もご提案ください。

【文献】

1)NAMS POSITION STATEMENT:The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement of The North American Menopause Society.

  [https://www.menopause.org/docs/default-source/default-document-library/2020-gsm-ps.pdf]

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[閉経後女性]

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