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【識者の眼】「C-2水準に関する議論から危惧されること」小林利彦

No.5090 (2021年11月13日発行) P.57

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-11-02

最終更新日: 2021-11-02

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医師の働き方改革に関する議論の中で、「C-2水準」への対応は未だ明確でない。一定期間集中的に技能向上のための診療を行う医師向けのC水準のうち、臨床医として6年目以降の者であって、先進的な手術方法など高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要とされる領域がC-2水準であったはずだが、最近の議論では、そのような「先進医療を含む医学研究や医療技術の進歩により新たに登場した技能」だけでなく、「基本領域の専門医取得段階では独立して実施できる等の高いレベルまで到達することが困難な技能」も含めて対象とする方向性が示されている。

国は、当初から、C-2水準に関する業務スケジュールを、①技能の整理、②医療機関の教育研修環境の審査、③技能研修計画の審査の3つに分けていた。その中で、C-2水準の対象技能となりうる具体的な技能の考え方(①技能の整理)を2021年度内に示すとしていたが、現時点では、C-2水準の対象分野に該当するものは「日本専門医機構の定める基本領域(19領域)内の医療分野」であるということと、その対象技能が前述した「先進医療を含む一連の技能」または「専門医取得段階では独立して実施できない技能」であること、そしてその上で、技能の習得にやむを得ず長時間労働が必要な「診療の時間帯を選択できない現場での業務」「同一の患者を継続して対応しなければ修得できない業務」「手術・処置等が長時間に及ぶ業務」が相当するといった基準しか出していない。

また、2022年度以降に予定されている②と③の審査を行う「審査組織」に関しては、厚労省からの委託組織とすることしか決まっておらず、関連学会等からの審査への参加や技術的助言を得るといった漠然とした運用方針しか見えてこない。実際、C-2水準であっても、B・連携B・C-1水準と同様で、医師労働時間短縮計画の策定や医療勤務環境評価センターによる受審が必要とされる状況下、審査組織の設置等が今後順調に進むのか疑問もある。

日本専門医機構の設立時のように、複数の団体が関係することで混乱が生じることも予想されるが、それよりも、中途半端な運用でC-2水準が動き出すことのほうが心配である。これまでにある程度の方向性が示されてきたB水準やC-1水準、そして未だ明確な方向性が示されていない専門業務型裁量労働制を検討している医療機関にとって、妙な逃げ道的な受け皿とならないことを願うばかりである。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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