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扁桃肥大・アデノイド増殖症[私の治療]

No.5082 (2021年09月18日発行) P.43

千葉伸太郎 (太田総合病院記念研究所太田睡眠科学センター所長)

登録日: 2021-09-19

最終更新日: 2021-09-14

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  • 口蓋扁桃,アデノイド(咽頭扁桃)は耳管扁桃,舌扁桃とともにワルダイエル咽頭輪を構成し,ともに年齢に依存する生理的肥大をきたす。アデノイドは4~6歳で,口蓋扁桃は5~7歳で最大となるが,顎顔面骨格の成長速度との相対的なバランスにより上気道の狭窄・閉塞をきたし,呼吸障害,閉塞性睡眠時無呼吸を含む睡眠関連呼吸障害をきたし,その結果,様々な臨床症状が出現する。アデノイド顔貌では神経症状として無気力,倦怠感,食欲低下,注意散漫,不安定,怒りっぽいなどの鼻性注意不能症を,身体症状として漏斗胸,年齢標準以下の身長・体重,狭く高い口蓋(high arch),小下顎・下顎後退などを認める。呼吸症状として鼻閉,習慣的な口呼吸,さらに睡眠中の症状として,いびき,無呼吸,努力性呼吸,下顎を挙上した気道確保の姿勢での就寝,中途覚醒,日中眠気,熟睡感不足などをきたす。

    ▶診断のポイント

    上記の臨床症状とともに,咽頭所見で口蓋扁桃肥大(Brodsky分類,図1),内視鏡所見による後鼻孔の閉塞の程度(Parikh分類,図2),頭部規格X線写真(側貌)での気道に対するアデノイドサイズA/N比(adenoidal-nasopharyngeal ratio)などによりアデノイドの増殖を評価する。さらに(閉塞性睡眠時無呼吸を含む)睡眠関連呼吸障害を疑う場合は,終夜睡眠ポリグラフ検査により診断する(場合により代替えとして在宅での簡易モニターの結果を参考とする)。

     

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    口蓋扁桃,アデノイド肥大を認め,小児の閉塞性睡眠時無呼吸と診断される場合,欧米のガイドラインではアデノイド切除術・口蓋扁桃摘出術が第一選択とされ,Childhood Adeno-Tonsillectomy study(CHAT)1)で手術の効果は79%とされる。一方,CHAT studyでは経過観察群でも46%が改善している。この理由として,季節性変動,生理的肥大の自然退縮,顎顔面発育による相対的な気道狭窄の改善などが考えられる。したがって,軽症・中等症(RDI<10)の場合は自然退縮の可能性を考慮し,保存治療が優先される。扁桃組織上にはグルココルチコイドやロイコトリエンレセプターが発現していることが報告されており,Cochrane reviewをはじめとするシステマティックレビューでは,噴霧ステロイド,抗ロイコトリエン薬によりアデノイド縮小,鼻閉,呼吸障害指数の改善が報告されている。

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