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【識者の眼】「感染症法に基づく要請を受けて─100年に一度の場を医師はどう考えるか」尾﨑治夫

No.5081 (2021年09月11日発行) P.53

尾﨑治夫 (公益社団法人東京都医師会会長)

登録日: 2021-09-03

最終更新日: 2021-09-03

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8月23日、国と東京都から感染症法第16条の2第1項による新型コロナウイルス感染症協力への要請を受けた。東京都医師会としては、できる限りの協力をしたいと考えている。

翌24日に本会で行われた地区医師会感染症担当理事連絡会においても、「既に会員の病院・診療所ともにコロナ診療に携わっている医療機関が多く、皆さんの疲労がピークに近づいている中で、これ以上の協力依頼は誠に心苦しいが、コロナ感染で苦しんでいる都民のために、さらなるコロナ診療への協力をお願いしたい」と役員一同、深く頭を下げてお願いをした。不平、不満をこらえて協力しようとの意見が多数を占めたことに本当に涙が出た。

東京都からの要請には、施設環境や人員の関係で、直接コロナ診療に関わることのできない医療機関は、都が要請した施設(臨時の医療施設、宿泊療養施設、入院待機ステーション、酸素ステーション等)に対する人材派遣をお願いしたいとある。

スペイン風邪以来、100年に一度のパンデミックといわれる今、まだまだ収束(完全な終息は望めないという意味で「収束」を使う)には年単位の時間がかかるであろう。ただ、いずれはやってくる収束。その時にコロナ診療に全く関わらなかった医療従事者がいたとしたら、その人たちはどう思うであろうか。傍観者として終わったことに何らかの負い目が残るのではないか。

一方、コロナ診療に関わった医師には、今後の日常診療に対して、困難な状況下でも自信をもって診療にあたれる、そうした良い影響が出てくるのではないかと思っている。

現在、医療従事者は、ほとんどが2回目のワクチン接種を終えていて、感染の可能性はあっても、自らの命の危険、重症化は高い確率で防げるはずである。感染防御の知識の整理、個人用防護具(PPE)の着脱訓練等は改めて必要になると思うが、今までコロナ診療に関わってこなかった多くの医師は、もっともっとコロナ診療に関われるはずである。

大学を例にとれば、大学院生、研修医を含め、まだ一部の人材がコロナ診療に関わっていないか、関わろうとしても参加できない現状があると思う。このパンデミック、しかも大災害に匹敵した惨状を呈している今、研究者ではなく教育者としての顔を持つ大学の指導的立場にある方には、平時の考えは捨てて、協力できる人材を1人でも多く派遣してもらいたい。非医師会員の先生、自由診療を行っている先生も含めて、同様の協力をお願いしたい。

尾﨑治夫(公益社団法人東京都医師会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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