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高齢者胃癌診療の問題点と解決策について

No.5068 (2021年06月12日発行) P.49

竹内裕也 (浜松医科大学外科学第二講座 (消化器・血管外科学分野)教授)

市川大輔 (山梨大学医学部外科学講座第1教室教授)

登録日: 2021-06-10

最終更新日: 2021-06-08

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  • 最近,胃癌診療において高齢患者の割合が増加しています。腹腔鏡下胃癌手術の普及により高齢患者でも比較的安全に根治手術が可能となってきましたが,一方で胃術後障害によりADLが低下してしまうケースも経験します。高齢者胃癌診療の問題点と解決策についてご教示下さい。
    山梨大学・市川大輔先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    竹内裕也 浜松医科大学外科学第二講座 (消化器・血管外科学分野)教授


    【回答】

     【個々の患者の胃癌病態と臓器機能の低下を正確に評価し,できる限り低侵襲に治療を行うことが重要】

    ピロリ菌除菌や食生活の変化により若年者胃癌が減少し,超高齢社会の到来も相まって高齢胃癌患者が増加しています。高齢胃癌患者に対する治療では,様々な問題を考慮する必要があります。

    最初に,高齢患者では併存疾患を有することが多く,様々なレベルの臓器機能低下を認めるため,手術リスクが増す可能性が挙げられると思います。これらの患者では,胃癌の担癌状態に加えて高齢による低栄養状態が重なることも多く,それ自体も手術リスクを増加させる要因になります。腹腔鏡下胃切除の導入初期は,気腹や手術時間の延長などの理由から高齢患者への適応は慎重に行われてきましたが,近年の報告では,高齢患者やperformance statusの悪い患者でも腹腔鏡下胃切除が安全に施行可能であり,手術関連死亡や術後合併症の発生割合は開腹手術に比較して低下する可能性も示唆されています。特に高齢患者では,術後肺合併症が術後短期成績だけでなく長期成績にも影響を及ぼすとされ,その予防がきわめて重要ですが,開腹手術に比較して腹腔鏡下手術で減少する可能性も報告されています。

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