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【一週一話】盲聾二重障害に対する人工内耳手術─再び聞いて話す喜び

No.4734 (2015年01月17日発行) P.53

加我君孝 (国際医療福祉大学教授・言語聴覚センター長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-15

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  • 視覚と聴覚の2つの障害のある状態は二重障害あるいは盲聾と呼ばれる。

    先天的あるいは後天的に視覚障害があると,教育は盲学校で受ける。卒業後はマッサージ師の道を歩む人が大半である。成長,あるいは加齢によって新たに難聴が出現し進行する場合がある。その場合,補聴器を装用することでコミュニケーションをとることになる。しかし,難聴が高度あるいは重度になると補聴器の効果はなくなるため,盲聾患者とのコミュニケーションは触点字の通訳を介することになる。点字がわからない場合,手のひらに大きく少し力を入れてカタカナを書くことになる。筆者の外来を受診する盲聾患者は,触点字通訳同伴である。コミュニケーションは通訳を介してスムーズに行われる。点字をその場で作成する「プリスタ点字速記用タイプ」(ドイツ製)という点字プリンター持参の場合もある。

    70歳の男性患者が毎回,奥さんに手を引かれて受診していた。重量挙げの一種のbench pressの選手でもある。難聴が進行し,補聴器では試合関係者の指示が聞こえず困るようになった。しかし,左の人工内耳手術後,再びbench pressの試合に参加して,シニアクラスで105kgを上げ優勝した。76歳となった現在でも,日々のトレーニングを重ね,試合に出場しているのは驚異である。

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