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【識者の眼】「コロナ禍での医療機器・体外診断用医薬品のPMDAによる承認審査」藤原康弘

No.5067 (2021年06月05日発行) P.61

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-05-19

最終更新日: 2021-05-31

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本コラムの初回(No.5052)で簡単に紹介したが、PMDAでは医療機器と体外診断用医薬品(医薬品と銘うってはいるが、簡単に言えば種々の検査キット:以下、IVD)の承認審査業務や安全対策業務も行っている。

新規性や使用時のリスクが高い医療機器〔高度管理医療機器と呼ばれる人工呼吸器(国際分類ではクラスⅢ)、植え込み型心臓ペースメーカー(同、クラスⅣ)など〕、また、感染症の検査に使用するIVDは、提出された資料(試験データ等)が現在の科学水準に基づき審査され承認される。これら品目の標準的な審査期間は1年程であり、審査スピードは米国FDA〔CDRH(Center for Devices and Radiological Health)という部署が担う〕と肩を並べている。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の医療機器やIVDについては、優先的な審査で迅速に承認している。

医療機器やIVDの審査は、申請される品目の疾患領域等に応じて、医療機器審査第一部、第二部、プログラム医療機器審査室(2021年4月新設)、体外診断薬審査室の2部2室体制で行う。所属する審査員は約80名で、うち医師や歯科医師は7名程度、その他も工学をはじめ様々な専門性を有する人材で構成されており、獣医師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士、医学物理士などの資格等を持つ者も多数いる。

昨年の春から大型連休にかけて、COVID-19が急速に拡大し始めた当時、人工呼吸器や人工心肺装置、診断支援プログラム医療機器、PCR検査装置や簡易抗原検査キットなどの需要の高まりを受け、我々は医療現場での必要台数を確保するために、新規に申請されるこれらの機器とIVDの審査に休日返上で全力を挙げて取り組んだ。さらに医療機器の審査にあたっては、医薬品審査と同じ申請資料の信頼性のチェック(GCP実地調査など)に加えて、製造所のチェック(QMS調査と呼ばれる)も必要で、コロナ禍では、それらの多くをリモート環境下で実施した。ちなみに、昨年来のCOVID-19関連の医療機器とIVDの承認件数は、今年4月末現在でそれぞれ18件、56件である。

霞が関で働く国家公務員には労働基準法は適用されないが、PMDAは独立行政法人であるため、労働基準法の遵守を常に配慮しながら、非常事態にある医療現場のニーズに迅速に対応しなければならないというジレンマに常に苛まれるコロナ禍の日々である。職員には「我々はエッセンシャルワーカーである」と鼓舞しつつ、一方で、心身の健康管理に気を配る日々は、医療機関の方々と同じ悩みを抱えているように感じている。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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