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意識障害(せん妄を含む)[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.38

大澤 誠 (大井戸診療所理事長・院長)

登録日: 2021-05-07

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  • 脳全体の働き具合の量的変化を段階的に表すために意識レベルという概念が使われる。刺激に対してどのように反応するかという観点から意識レベルが判定される。脳のダメージによって生じ,原因が取り除かれなければ意識障害は持続する。これが睡眠とは異なる点で,睡眠は正常な意識レベルの変動で,一定時間後には覚醒する。このほかに意識の質的変化としてせん妄がある。意識水準の軽度低下(うとうと状態)に,精神的興奮が加わって幻覚や妄想が現れ,一見興奮した状態となる(過活動型せん妄)と,無表情,無気力,傾眠などの活動性低下の状態が加わった状態(活動低下型せん妄),およびその混合型が存在する。

    ▶アセスメントのポイント:認知症との鑑別

    原田は,その著書「意識障害を診わける」1)の中で,次のように述べている。

    「軽度の意識混濁者でも病識を欠く。それに比し,認知症では常にではないが自分の記憶力低下や思考力の衰えを自覚している。このことは,外界の認知よりも自分自身の心的機能を認知することがより難しいことに由来するのであろう。意識障害では,たとえ程度が軽くても,障害がより全般的なため,自己洞察を持ちにくいと言える。そして病者自身が訴え悩むことのない意識障害であるから,医師が見つけなければならない。そのためには,日常の診察場面で,常に相手の「意識状態は?」という問いを自らに発し,自らその答えを出す作業を行うことである。相手の動きの1つ1つに相手の注意がどれくらい行き渡っているか,精神活動の活発さと細かさと周囲へのマッチの仕方を見つめることが必要である」。

    ▶治療の考え方

    高齢者の診療にあたって意識障害を見落としてはならない。それは脳の器質的変化のみでなく,様々な全身の疾病により引き起こされるので,意識障害の発生を早期に見つけることは身体疾患の早期の治療につながる。また,早期の発見は治療により可逆性の経過をたどりうるが,遷延化すると非可逆性の経過をたどって認知症に移行したり,全身状態の悪化につながったりするので注意を要する。

    本稿では高齢者に生じやすく,在宅医療において家族や介護者を悩ませる,せん妄に絞って話を進めることとする。せん妄は,せん妄になりやすい人(準備因子)に,せん妄を促進する要因(誘発因子),さらにせん妄そのものの原因(直接因子)が加わって発生する。準備因子には,脳血管疾患,認知症,高齢者,せん妄の既往,アルコール多飲などがある。誘発因子は,大きく環境的要因,睡眠関連要因,身体的要因の3つにわけられる。環境的要因には入院などの環境変化・部屋の温度や明るさ・騒音,睡眠関連要因には昼夜逆転や不眠,身体的要因には疼痛・かゆみ・便秘などが挙げられる。せん妄そのものの直接因子は,炎症,低酸素,脱水,貧血,ナトリウムやカルシウムなどの電解質異常に加え,オピオイド,ステロイド,ベンゾジアゼピン系などの薬物がある。

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