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【識者の眼】「我が国における敗血症標準治療の普及と生存率の推移」藤島清太郎

No.5061 (2021年04月24日発行) P.64

藤島清太郎 (慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)

登録日: 2021-04-12

最終更新日: 2021-04-12

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敗血症は、様々な感染症によってショック、臓器障害や凝固異常を呈する重症病態である。新型コロナウイルス感染症も、重症化すると高率に敗血症を合併することが知られている。診断基準として、2016年からは臓器障害の指標であるSOFAスコアが用いられるようになったが、本スコアは従来の呼吸数、脈拍、体温、白血球数(桿状核球率)からなるSIRSスコアに比べると、診断特異度は高いが感度は低いことに留意が必要である。また、SOFAスコアはベッドサイドで用いるには煩雑であり、スクリーニングには呼吸数・収縮期血圧・意識変容からなるqSOFAスコアの使用が奨励されている。敗血症の予後改善には、早期の治療介入が重要なため、診断時にSOFAスコア2点以上上昇の基準を満たしていなくても、今後満たし得ると判断した場合は治療を開始して良いとされている。

ご存じのように、敗血症の治療は抗菌薬投与のみでは不十分であり、輸液蘇生などを迅速かつ適切に開始する必要がある。5年以内に25%の生存率改善を目標として2002年から開始されたsurviving sepsis campaign(SSC)は無事目標を達成し、その後も更なる生存率改善に向けて継続中である。SSCの骨子は、国際的な敗血症診療ガイドライン(SSCG)の作成と啓発、および疫学データの収集・分析による検証である。

SSCGは4年ごとに改訂され、本年にはSSCG2020が公開される。また、我が国でも2012年以降は独自の敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)が作成されており、先日J-SSCG 2020が一足先に発刊された。本ガイドラインではダイジェスト版冊子に加えて、ベッドサイドでの活用のためスマホ用アプリも準備されている。

一方、疫学的検証では欧米が先行し、SSCG開始後世界各国における経年的なSSCG遵守率の向上と生存率改善が示された。我が国でも遅ればせながら日本救急学会が2011年と2017年に前向き観察研究を実施し、病院死亡率の29.4%から23.4%への改善と、主要治療4項目の遵守率向上を明らかにした。我が国全体での更なる生存率の改善を目指すには、今後救急・集中治療以外の診療領域も含めた啓発活動の展開が必要と考えている。

藤島清太郎(慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)[敗血症の最新トピックス⑮]

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