【質問者】
尾内一信 川崎医科大学小児科学教授
【健康な子どもへの接種は,安全性が十分に確認されるまで必要ない】
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は健康な子どもにとって深刻な病気ではなく,多くの場合,無症状か軽症です1)。したがって,健康な子どもにとって,ワクチンのメリットはそれほどありません。
社会における流行を阻止し,ハイリスクの人たちへの伝播を防ぐ目的での接種も検討されると思いますが,少なくとも現時点では子どもたちは流行の起爆剤にはなっていません。むしろ社会の中での流行が家庭に持ち込まれて,子どもたちに及んでいます1)。したがってインフルエンザとは異なり,子どもたちに広く接種しても,感染拡大防止効果は限定的だと思われます。
もちろん,数多くの子どもたちが感染すれば,中には重症化する場合もあるでしょう。子どもへのワクチン接種が社会の中での感染拡大を防止する効果もゼロではありません。特に家庭内にハイリスクの人がいる場合,子どもが家庭に持ち込まないよう防ぐべきです。もしワクチンが潤沢にあるのであれば,子どもにも接種すべきではないかという議論が起こるのは当然です。しかし,稀な重症化を防ぐためのワクチンが,重大な副作用を稀ならず起こしてしまうのであれば有害なものとみなされます。ワクチンの治験が何万人もの規模で行われても,稀な副作用を検出することは困難です。新しいタイプ(mRNA)のワクチンでもあり,成人で広く接種されて重篤な副作用がきわめて稀であることが確認されるまでは,健康な子どもへの接種を急ぐべきではないと私は考えます。
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