No.5057 (2021年03月27日発行) P.61
川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)
登録日: 2021-03-05
最終更新日: 2021-03-05
先生方の病院・診療所では「プライバシーポリシー」を定めていらっしゃるでしょうか。プライバシーポリシーとは「個人情報保護方針」のことで、個人情報取得の目的等について定めるものです。
個人情報保護法により、個人情報を扱う事業者は「個人情報を取得する場合、その利用目的を本人に通知又は公表する」必要があります(同法18条)。また、個人情報の開示請求や削除請求等を受けた場合の手続などを定めておく必要もあります(同法27条)。特に、医療機関が取り扱う病歴といった内容は「要配慮個人情報」(同法2条3項)ですから、慎重に扱わなければなりません。
そのため、プライバシーポリシーの中で「個人情報の取得目的」「開示請求、削除請求の手続き」「個人情報を第三者に提供する場合」などの事項を定めておくことが重要になります。例えば、個人情報の取得目的でいうと、「診療のため」という目的は明らかですが、「診療報酬請求のため」「学生の実習のため」「症例研究のため」といった詳細な目的を規定している医療機関もあります。診療を受ければ診療報酬請求を行うのは当然のことなので、「診療のため」に付随して含まれるとも考えられますが、患者さんにとってはわかりにくい部分もあるので、念のため規定しているのでしょう。その他、どのような場合に第三者に個人情報を提供するのかという点も患者さんにとっては関心事でしょう。
患者さんから開示請求や削除請求を受けた場合の対応についても、事前にプライバシーポリシーに定めておくと、落ち着いて対処できるので、トラブル防止につながります(特に、本人確認の具体的な方法や手数料等の規定は重要です)。
私が理事を務めている診療所でもプライバシーポリシーを定めていますが、私が受付事務をしていた際(1年ほど受付事務としても働いていました)、一度だけ問診票を書いていた患者さんから「個人情報はどのように管理しているのか」という質問をお受けしたことがあります(その患者さんも受付事務がまさか弁護士だったとはご存じなかったと思いますが)。その際はプライバシーポリシーとその内容をご案内した覚えがあります。
患者さんとしては、自身の病歴等を含めた個人情報がどのように管理されているのかが予めわかることは、医療機関に対する信頼につながると思います。また、一度決めたプライバシーポリシーも、時流の変化にあわせて改正していくことが重要です。
川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]