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【識者の眼】「『ザイタク医療』②〜日本医事新報という道標〜」田中章太郎

No.5057 (2021年03月27日発行) P.64

田中章太郎 (たなかホームケアクリニック院長)

登録日: 2021-03-03

最終更新日: 2021-03-03

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日本医事新報創刊100周年おめでとうございます。この素晴らしい記念すべき年に、『識者の眼』に参加することができ大変光栄に思っています。今回は、この日本医事新報に関するタナカの想い出話を一つ。

研修医の始まりの夏、同級生の死(本連載①No.5053に詳細)は、大学病院での研修に、大きな混乱をもたらした。医師の研修は、どの様にあるべきか? 労働基準を適応させるべきか? 給与はどうなのか? 健康保険は? 身分保障は? 本当に先の見えない状況であった。学ぶ側も教える側も、医学教育的に、ありとあらゆるところで混乱があった。学ぶ側であったタナカは、その研修に、どの様な考えを持って臨めばいいのか、途方に暮れたというのが正直なところだった。医師とはこうあるべきだ、という道標を見失いかけていた。本当に苦しかった。先輩医師達の間にも『研修医』という存在に対し、腫れ物にでも触る、そんな如何ともし難い雰囲気が少なからずあったことを記憶している。同級生の死から現在の医師臨床研修制度が始まるまでの6年間、混乱は続いていたように思う。

そんな混乱の中、道標となったのが、この日本医事新報だった。今も捨てずに大切に書棚に置いてある日本医事新報ジュニア版No.365〜368での巻頭特集『研修医べからず集』が、路頭に迷いかけたタナカを救ってくれたのだ。あの当時、何度も何度もその特集を読み直した。久しぶりにその特集を開き、再確認した。最初のメッセージが、こうだ。《生涯の戒めとして「患者さんのために医者がいる」のであって、「医者のために患者がいる」のではないことを銘記すべし》《教授や先輩の顔をみて仕事をするな。患者の顔をみて診療せよ》。この特集がなければ、『ザイタク医療』に取り組む今のタナカはいないと言っても過言ではない。

現在、コロナ禍で医療現場は混乱している。医師になり研修を始めたものの、正しいことが何なのか、よくわからなくなっている若い医師達がいるかもしれないが、彼らに伝えられることがあるとするならば、今も昔も変わることなく、「患者さんのために医者がいる」「患者の顔をみて診療せよ」だ。

タナカは、こんな研修医時代を過ごし、その後も、医療の原点を常に念頭に、学び続けることができる機会に恵まれた。そして今、患者や市民や介護者や医療者が共に作り上げる医療『ザイタク医療』に、たどり着いた。次回も、さらに、具体的に話を進めようと思う。

田中章太郎(たなかホームケアクリニック院長)[在宅医療]

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