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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症と集中治療」松田直之

No.5054 (2021年03月06日発行) P.61

松田直之 (名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)

登録日: 2021-02-18

最終更新日: 2021-02-18

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、およびその感染症COVID-19が日本で初めて国立感染症研究所で診断されたのは2020年1月15日だった。同年1月20日に横浜港を出港したダイヤモンド・プリンセス号は、世界57カ国から船員1068名、乗客2645名などの約3713名が搭乗し、その後712例がCOVID-19と診断された。日本ではこれまでに、2020年4月、同年8月、2021年1月の3つのCOVID-19のピークを迎え、21年2月17日よりmRNAワクチンの接種が開始された。このような中で、急性重症患者の最後の砦として、集中治療の重要性とあり方が問われている。

COVID-19では、集中治療を必要とする多臓器障害が急速に導かれる場合がある。血液凝固異常では播種性血管内凝固(DIC)が、線溶亢進型として表出する傾向があり、一般の細菌性敗血症のサイトカインストームによる線溶抑制型DICとは少し様相が異なる。COVID-19の病態は、SARS-CoV-2の接着するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現部位と関連し、肺胞嚢領域においても微小血管障害や血栓性が高まる。このように、ウイルス独自の特徴やTLR7などの細胞内情報伝達を介した血管内皮障害にも注意しなければならない。

現在、日本集中治療医学会は他学会と連携し、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性腎障害などに対する前向き臨床試験を整理し、診療ガイドラインを作成してきた。その一方で、個々の病態を観察する能力、臓器障害の重症化を防ぐ能力などを、ワークショップやジョブトレーニングを介して、専門医の裁量として向上させることにも努めている。

2016年より敗血症は「感染症によって導かれる臓器障害」として定義されるようになった。意識、呼吸、循環、肝臓、腎臓、凝固線溶などの生体のすべての臓器機能を並行して評価し、患者の背景因子に合わせて増悪因子に対応することになる。敗血症という言葉は、COVID-19や外毒素を産生する細菌感染症などへの対応を考えるに当たり、管理上のテクニカルタームに過ぎない。進展する多臓器障害への根治的治療は、微生物の特徴と患者病態を理解した上で成り立つことに、これからも私たちは留意していきたい。

松田直之(名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス⑬]

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