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【識者の眼】「精神科におけるオンライン診療への期待」平川淳一

No.5050 (2021年02月06日発行) P.75

平川淳一 (平川病院院長、東京精神科病院協会会長)

登録日: 2021-01-26

最終更新日: 2021-01-26

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コロナ禍で最も変化したのが、会議の開催形式と実感している。従来は会議のために半日は出張となり、病院を空けなければならなかったが、今はWeb会議になり、出向く必要はなくなった。私は慣れないためか、Web会議は好まない。発言する人の様子以外は表情が見えず、いつの間にか時間が過ぎて、言いたいことも言えない。司会者の不慣れもあると思われるが、もう少し経験が必要であると思う。また、オンライン診療がコロナ禍の時限的・特例的な取り扱いとして次々と緩和され、恒常化してきている印象である。私は、診療行為は対面が基本であり、精神科で使う抗精神病薬の類の処方はオンライン診療では取り扱い自体も不安であるし、過量服薬など何か問題が起きた時の対処はどうするのかなど、マイナスなことばかりが頭に浮かび、基本的には否定的な考えを持っていた。日本精神科病院協会もあまり性急に進めるべきでないという提言(https://www.nisseikyo.or.jp/about/teigen/images/20201028_01_kenkai.pdf)を10月に出したところである。

このような時に、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の岸本泰士郎先生とWeb対談をする機会があった。岸本先生は、精神科におけるオンライン診療の先駆者であり、第一人者である。反論するつもりで臨んだが、話を聞いて少し考えが変わった。コロナ禍では通院困難な患者がたくさんおり、米国ニューヨークなどでは、持効性注射薬(long acting injection:LAI)か、クロザピンの患者など、特殊な治療をしている人以外はほとんどがオンライン診療で治療継続をしている事実があること、そして、他科に比べ、精神科が最もオンライン診療には向いていること、さらに、患者ニーズも今後、オンライン診療に向かうため、医療機関を選択する際のキーワードにもなりうるということに妙に納得した。認知症で診療拒否をしている高齢者、子育て中の母親、引き籠っている精神障害者など、オンライン診療で治療機会が増えることは精神科医療にとっても良いことであると考えるようになった。

しかし、その前にまずは、自らのオンライン診療に関わる知識や技術を学び研鑽する必要があると思う。その上で、今後は利便性も加味したり、現状はかなり手間がかかり日常診療より効率が悪く診療報酬も低いため、これを改善し、将来は精神科医療の標準治療になれば好ましいことだと思う。オンライン診療が医者や周辺機器メーカーの金儲けの道具ではなく、患者さんの利益になるよう進歩することを祈る。

平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)[オンライン診療]

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