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【識者の眼】「COVID-19による登校自粛・活動自粛は健康な子どもにデコンディショニングを引き起こす」石﨑優子

No.5050 (2021年02月06日発行) P.71

石﨑優子 (関西医科大学小児科学講座准教授)

登録日: 2021-01-22

最終更新日: 2021-01-22

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、昨年、海外で都市封鎖が行われ、日本国内でも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、4月から5月にかけて、緊急事態宣言が発出された。それにより、生活の維持に必要な場合を除く外出の自粛が要請され、学校は休校となった。しかし実際には、小・中学校の多くは緊急事態宣言発出前の3月から解除後の6月にかけて、休校もしくはオンライン授業が続いており、学校再開後の子どもたちの肥満や拒食、児童虐待、メンタルヘルスの問題が注目されている。

休校による活動量低下が子どもの身体に与える影響としてデコンディショニング(Deconditioning)がある。筆者は本誌No.5000(2020年2月22日号)の本欄で「子どもの起立性調節障害はなぜ遷延するのか—身体不活動による『デコンディショニング』の影響」を紹介したが、1年後の現在、デコンディショニングが子どもたちに広がっていると考えられる。

デコンディショニングは身体の不活動により引き起こされる筋、骨格、循環、呼吸機能等の身体機能の低下である。筋力低下、骨密度の低下、起立耐性の低下がその代表であり、他にインスリン感受性の低下や最大酸素摂取量の低下等もある。最近、COVID-19による休校が健康な子どもに与える影響として、米国で学校閉鎖前後の心肺機能試験の比較において、休校後に運動耐容能が低下したとの報告が発表された(Dayton JD,et al:Pediatric Cardiology.2021 Jan 4;1-6.)。この論文では、オンライン授業は教育上のニーズに対応できても運動にとって代わることはできないと述べているが、わが国でも同じ事が言えよう。オンライン授業は子どもたちの学習を保証したとしても、成長期の子どもに必要な身体活動量は埋め合わせられないのである。感染第三波の到来により、2回目の緊急事態宣言が発出された現在、子どもにとっての身体活動の重要性を再度認識していただきたい。

石﨑優子(関西医科大学小児科学講座准教授)[小児科][休校][身体活動]

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