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【識者の眼】「ジェネリック医薬品ロードマップ、ポスト80%は“80%の堅持”が現実的」坂巻弘之

No.5042 (2020年12月12日発行) P.61

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-11-30

最終更新日: 2020-11-30

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ジェネリック医薬品(GE)については、かねてより医療現場から、品質、供給体制、情報提供等に対する懸念が示され、使用促進のための議論を経て、2013年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が策定された。ロードマップでは、GE使用促進のための目標値の設定と、上記懸念点のモニタリング強化などが明記されている。また、目標値については、当初、使用割合(数量シェア)が2018年3月末までに60%以上と設定されたが、2015年6月の閣議にて「2017年央に70%以上とするとともに、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする」と上方修正され、さらに2017年6月閣議において、2020年9月までに80%、と決定されてきた。

目標達成時期を過ぎ、80%を超えたかどうかは微妙ではあるものの、概ね目標値は達成しているといえる。そこで、次の目標をどうするかの議論が始まっている(「ポスト80%」議論)。そこでは、金額目標値の設定を含め、いくつかの論点はあるが、さらに高い数量シェアの目標値設定(例えば85%)も議論になると予想される。しかしながら、先発品との効能・効果の違いなどもあり、全国的に80%を超える数量シェア達成はこれまで以上に困難となることが予想される。一方で、都道府県・地域毎の目標値達成状況のばらつきや、保険者、病院区分毎、薬効、年齢別にもばらつきがある。また、現行ロードマップで指摘されている安定供給や供給に関連する品質問題も相次いでいる。

そこで、ポスト80%の議論としては、数量シェア80%を確実なものとし、堅持することを当面の目標とすることが現実的ではないかと考える。そのため、都道府県や保険者のすべてで80%を達成することと、その達成時期を明示することが必要である。さらに、GEに対する懸念点を払拭するために、欠品や、回収、製造中止等の事例の発生件数を企業毎に公表し、GE企業の企業評価を強化する取り組みも必要と考える。また、GEによる薬剤費削減効果とGE使用促進のための加算の総額がほぼ同等ともいわれている。これまでのGE使用促進のための診療報酬の費用対効果についても精緻な検討を行い、場合によっては、今後、加算に加え、減算の仕組みの拡大も検討すべきではなかろうか。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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