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【識者の眼】「総合診療専門医のサブスペをどう考えるか?」草場鉄周

No.5039 (2020年11月21日発行) P.62

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-11-02

最終更新日: 2020-11-02

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総合診療専門医を目指して研修を希望する専攻医の少なさの理由の一つに、更に修練を深めるサブスペシャルティがないという問題がよく挙げられる。今回は、この総合診療のサブスペシャルティについて考えてみる。

諸外国の状況を見ると、米国では同じ専門医と言える家庭医療専門医には思春期医学、老年医学、緩和ケア、スポーツ医学などを学ぶfellowshipが存在するし、英国ではGP(general practitioner)に対して皮膚科領域などについて関連学会と協力して能力を認証するGP with extended rolesという枠組みがある。いずれも、広義では総合診療領域に含まれうる特定領域の知識や技術を深く学ぶ仕組みである。他には、大学院で公衆衛生学修士、教育学修士あるいは家庭医療学修士を取得するような、研究や教育など学術面で修練を積む方向もある。ちなみに、筆者はカナダで家庭医療学修士コースにて学んだ。

その一方、日本において現在検討されているサブスペシャルティは家庭医療専門医と病院総合診療専門医である。前者は主として診療所や中小病院をフィールドにしながら在宅医療や地域包括ケアの経験を深め、後者は主として中小から大規模の病院において臓器横断的な診療を担い、高齢者診療、緩和ケア等に力を発揮しつつ、他科との連携や地域連携の経験も深めていく。諸外国と異なり、総合診療分野の医師が診療所から大病院まで幅広い医療機関で活躍している日本の医療の実情が、この2つの分野に投影されていると言って良い。そして、この2領域は深く極めて分化するよりも、働くフィールドに合わせて選択する「場に基づくサブスペ」と考えた方が自然である。

これに加えて、諸外国にあるような老年医学、緩和ケア、あるいは在宅医療などの関連領域をspecial interestとして学ぶコースが用意され、専門医の志向性に応じて選択できるのが望ましいだろう。ただ、サブスペの議論の前提として、総合診療能力の維持が不可欠であり、これが失われると総合診療専門医を創設した意義が失われることは明記しておきたい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療 ]

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