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■NEWS 処遇改善や介護報酬体系の簡素化を議論―社保審介護給付費分科会

No.5034 (2020年10月17日発行) P.68

登録日: 2020-10-08

最終更新日: 2020-10-08

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社会保障審議会介護給付費分科会は930日、2021年度介護報酬改定に向けて、介護人材の確保や、介護報酬体系の簡素化などについて議論した。介護人材の確保では、「介護職員処遇改善加算」と19年度改定で創設された「介護職員等特定処遇改善加算」について、要件の見直しや対象職種の拡大などを求める意見が出た。

19年度の介護報酬改定では、勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に公費1000億円を投じ、「介護職員等特定処遇改善加算」(以下、「特定処遇改善加算」)が新設された。厚生労働省によると、203月サービス提供分における同加算の算定率はサービス全体で58.5%。内訳は加算(Ⅰ)が28.1%、加算(Ⅱ)が30.5%だった(介護予防サービスを除く)。

これに対して、従来からある「介護職員処遇改善加算」(以下、「処遇改善加算」)は、203月時点で91.7%の事業所が加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)を取得。18年度改定で一定の経過措置期間を設けた上で廃止することが決まった加算(Ⅳ)、(Ⅴ)の算定事業所はいずれも1%を下回り、上位区分へのシフトが進んでいる状況がうかがえた。

「特定処遇改善加算」の算定にあたっては、職場環境等要件の3つの区分(資質の向上、労働環境・処遇の改善、その他)それぞれで1つ以上の取り組みを実施していることが求められるが、河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)は、介護職員の定着率向上を一層後押しする必要があるとして、「それぞれの区分で2つ以上の取り組みを求めるなど、具体的な取り組み事項も含め、要件を見直してはどうか」と提案した。伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は、加算財源の配分について「特定処遇改善加算」は事業所の裁量で介護職員以外の職種への配分が可能であるのに、「処遇改善加算」は介護職員に限られる点を問題視。「すべての職種を含めた理想の処遇改善を図るべく、対象の拡大と引き上げを行うべきだ」と主張した。「処遇改善加算(Ⅳ)、(Ⅴ)」の次回改定での廃止には、ほとんどの委員が賛意を示したが、一部、慎重な対応を求める声もあった。

■介護報酬体系の簡素化は各種加算の整理が論点に

介護報酬体系の簡素化では、各種加算の整理が論点になった。サービス別の加算の種類数を介護保険制度創設当初と現在とで比較すると、例えば通所介護は5種類から24種類に、介護老人保健施設は8種類から54種類に、いずれも大幅に増加。ただ、実際の算定状況は大きくばらつき、「リハビリテーションマネジメント加算」や「夜間職員配置加算」など13種類の加算では、過去2年間の平均算定率が80%を超える一方で、過去1年間に算定がない加算は34種類、過去1年間の平均算定率が1%未満の加算も63種類あった。

このため算定率が80%以上の加算は基本報酬に統合し、算定率が1%未満あるいは算定実績がない加算は廃止すべきとの意見が目立ったが、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「算定率の高いものの中にも単発で1回きりの加算もあれば継続的に取る加算もある。施設の経営が激変しないような取り扱いをお願いしたい」と慎重な議論を要請。武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、利用者の立場から見れば算定率が低くてもメリットの高い加算もあると指摘し、廃止を論ずる前に算定を促進する策を講じるべきではないかとの見解を示した。

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