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慢性膵炎[私の治療]

No.5032 (2020年10月03日発行) P.45

橋本千樹 (藤田医科大学消化器内科学Ⅱ臨床教授)

廣岡芳樹 (藤田医科大学消化器内科学Ⅱ教授)

登録日: 2020-10-05

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  • 不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの不可逆的かつ進行性の組織学的変化を特徴とし,膵内外分泌機能に大幅な減退をきたす病態である。成因によってアルコール性と非アルコール性に分類するが,男性ではアルコール性が最も多く,女性では原因不明の特発性が多くみられる。

    ▶診断のポイント

    腹背部痛を繰り返す「代償期」,徐々に膵内分泌機能が荒廃していく「移行期」,腹背部痛が軽減し膵内外分泌不全を伴う「非代償期」にわけられる。

    慢性膵炎の代表的な画像所見として,CTで膵管内の結石や膵全体に複数ないしびまん性に石灰化を認めたり,MRCPまたはERCP像において膵管拡張などを認めたりする。

    慢性膵炎は膵癌の危険因子であるが,慢性膵炎に合併する膵癌の診断は困難なことが多いため,一度専門医に相談し膵癌を最初に完全に除外しておく。また,経過中に膵癌が合併してこないか,画像検査を定期的に行うことが重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    慢性膵炎の病期(代償期,非代償期,移行期)にわけて対処する必要がある。代償期では,膵機能が比較的保たれているため,腹痛をはじめとする諸症状が主となり,膵炎発作の予防,疼痛コントロール,原因や増悪因子の除去,日常生活の管理が中心となる。また,急性再燃した場合には,絶食,輸液,蛋白分解酵素阻害薬投与などの急性膵炎に準じた治療が必要となる。非代償期では,膵内外分泌機能がともに荒廃し,消化吸収不良および膵性糖尿病が出現する。腹痛,背部痛はみられなくなる。食事・栄養療法と糖尿病の管理が治療の中心となる。移行期では,代償期に比べ腹痛は軽減するが膵内外分泌機能障害が併存する,というように臨床的に代償期と非代償期の症状が混在しており,両期の治療を各症例に合わせて行う。

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