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異所性妊娠[私の治療]

No.5029 (2020年09月12日発行) P.44

増山 寿 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室教授)

登録日: 2020-09-15

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  • 子宮腔内以外の部位に受精卵が着床し,妊娠が成立した状態を異所性妊娠(ectopic pregnancy)と言う。頻度は全妊娠の1.0~2.0%とされるが,骨盤内感染症,性感染症の増加,子宮内容除去術,帝王切開既往の増加や生殖補助医療の進歩に伴い,増加傾向にある。その中で卵管妊娠は98%以上を占め,部位としては卵管膨大部妊娠が70%と最も多い。頸管妊娠は,子宮頸管に受精卵が着床し発育した妊娠であり,全妊娠の0.005~0.01%,異所性妊娠の約0.15%であるが,生殖補助医療後は約1.5%と約10倍の発生率と報告されている。さらに,生殖補助医療による妊娠の場合は,子宮内外同時妊娠の頻度が10倍程度増加するため,注意が必要である。また,帝王切開術の増加により,子宮峡部の瘢痕部に着床する,いわゆる帝王切開瘢痕部妊娠も増えており,癒着胎盤や子宮破裂などにより大量出血をきたしやすく,早期に適切な診断・治療が必要である。

    ▶診断のポイント

    内診・腟鏡診にて子宮,卵巣の大きさ,圧痛の有無,部位をチェックする。血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)濃度が1000~2000IU/Lを超え,経腟超音波検査にて子宮腔内に胎囊がみえない場合は,異所性妊娠を疑う。

    卵管妊娠の場合には,経腟超音波検査にて子宮腔内に胎囊を確認できず,時には子宮腔外に胎囊様構造や胎児(胎芽)を認める。卵管腫大は内部に小さなecho free spaceを持つ腫瘤として観察でき,正常卵巣と離れていれば診断しやすい。急性腹症で来院した場合は,既に破裂または流産の形で腹腔内に出血している場合が多く,ダグラス窩やレチウス窩に貯留液を認める。

    頸管妊娠の場合,頸管内膜の部位に胎囊を認め,カラードップラー法では胎囊周囲の血流増加を認めることが多い。胎囊周囲の頸管腺の存在を確認することにより,子宮峡部妊娠と鑑別する。また,不全流産で胎囊が頸管内に移動している場合は,胎囊周囲の血流の有無やプローベの圧迫により胎囊と頸管の間にずれが生じるかを観察する(sliding sign)。

    帝王切開瘢痕部妊娠では,経腟超音波検査にて子宮腔内および頸管内に胎囊がなく,瘢痕部に血管豊富な胎囊を認める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    卵管妊娠に対しては,手術療法,薬物療法および待機療法がある。全身状態,超音波検査所見,hCG値などを総合して治療方針を決める。

    頸管妊娠および帝王切開瘢痕部妊娠に対して,以前は子宮全摘術が唯一の治療法であったが,妊孕性温存を希望する場合は,様々な治療法を選択し子宮温存を図る。報告が少なく標準化した管理方針は確立されていないのが現状であるが,我々は,薬物療法を先行させる方針をとっている。

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