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【識者の眼】「市中病院内視鏡医師からみた対策型胃がん内視鏡検診」渡邉一宏

No.5028 (2020年09月05日発行) P.64

渡邉一宏 (公立学校共済組合関東中央病院光学医療診療科部長)

登録日: 2020-08-28

最終更新日: 2020-08-28

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コロナ禍は弱まり、2020年8月から世田谷区全体として内視鏡検診者数は少しずつだが戻り始めている。来年度に備えて、2017年当区検診初年度6カ月に当科内視鏡治療医が担当した198人(区全体3816人)を振り返ってみる。

胃がん検出は4人(区全体9人)で全例が2年前までに内視鏡検査が行われ、ピロリ菌が関与していた。この検診以前の検査では、初回検査が12人、胃透視検査が89人、他院内視鏡が51人と他院内視鏡から当院に流入する例は全体の1/4もあった。都市部の医療機関間の距離は異常に近い。この検診を当院ですることで病院初診にかかわる費用なく受診カードも自動的に作成される。このため病院が件数を増やしてしまい近郊クリニックの内視鏡患者を囲い込む恐れがあった。これに対し2018年から当院は1日患者数の自主制限を行った。しかし現在、新型コロナ感染患者対応施設での検診希望者はさらに減少しており、制限は必要なくなっている。他の問題点としては①胃がん1例を検出するのに内視鏡検査は610万円、胃透視検査は2020万円かかり(川田和昭, 他:日消がん検診誌. 2019;57.)、高費用であることや、②検診受診率の向上には初回や定年後未検者の拾い上げが重要で、各地域に適した郵送以外の通知の検討が必要なことなどがある。

さて、対策型胃がん内視鏡検診は胃がん死亡率減少が目標であり、精度管理は適切に行われなくてはならない(渋谷大助:日消がん検診誌. 2014;52.)。精度の低いところが淘汰されるのではなく、地域全体で精度を上げていくことが専門医と合同の2重読影の意義であり、私も参加する地域医師会主導の読影会(濱島ちさと:対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル. 2017, p27.)が経費削減されないよう切に願う。また自己負担金の軽減以外に鎮静剤の使用により今後の検診受診増が望める。この鎮静剤使用(別途料金)においては、世田谷区では各施設判断(50/88で可能)となっており、2011年からの浜松市(幸田隆彦:対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル. 2017, p103-7.)と同様に使用可となっている。ちなみに当院が所属する玉川医師会の検診1年目の鎮静剤使用率は34%で偶発症なしであった。今後、仮にコロナ禍が収束したとしても国民の検診受診意識の向上にはさらに時間を要すると思われる。

渡邉一宏(公立学校共済組合関東中央病院光学医療診療科部長)[内視鏡医療における地域貢献][胃がん内視鏡検診②]

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