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【識者の眼】「この国に生まれたるの不幸─コロナ・バッシング症候群(CBS)」岡本悦司

No.5029 (2020年09月12日発行) P.56

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)

登録日: 2020-08-25

最終更新日: 2020-08-25

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新型コロナ感染者は実に、この病を得たるの不幸に加えて、この国に生まれたるの不幸を重ねる─精神科医、呉秀三の百年前の言葉をもじればこんな表現になるだろうか。呉は、当時のわが国の精神医療を嘆いたのだが、それはあまりに自虐的だ。当時の日本の精神医療の貧困は疑いないが、だからといって精神病者が他国に生まれたら幸せだったかというと決してそうではない。

しかし、話を新型コロナに置き換えれば、呉の言葉はそのまま今の日本にあてはまる。大阪大学の三浦麻子教授(社会心理学)の国際比較研究1)によると「感染は本人が悪い」と考える割合は、日、米、英、伊そして中5カ国のなかで日本が突出して高かった。日本人として恥ずかしい結果ではあるが、これに異議を唱えられる者はいるだろうか?

感染者に対する悪意ある非難、詮索そして中傷─コロナ・バッシング症候群(corona bashing syndrome:CBS)の疾患概念は以下の通り。

わが国においては、新型コロナそのものよりもCBSの社会リスクの方が重大かつ時として致命的である。新型コロナの医学リスクは、人口当たり感染者数、致命率等いずれをとってもわが国は決して悪い方ではなく、自治体も情報公表にあたっては医学リスクよりもCBSという社会リスクにももっと配慮すべきだ。「感染者のプライバシーに御配慮を」という呼びかけも、CBSに対してはマスク手洗いと同様に無効なのだから。

【文献】

1)2020年6月29日読売新聞. [https://www.yomiuri.co.jp/national/20200629-OYT1T50107/]

岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部長)[新型コロナウイルス感染症]

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