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【識者の眼】「医療裁判における鑑定人─第3者評価の仕組みが必要ではないか」相原忠彦

No.5026 (2020年08月22日発行) P.60

相原忠彦 (愛媛県医師会常任理事)

登録日: 2020-08-07

最終更新日: 2020-08-07

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2020年7月13日に「乳腺外科医の控訴審判決」で有罪判決が言い渡された。論点は「せん妄」の診断基準であった。日本医師会は学術的コンセンサスを得られない判決として強く抗議した。そこで思い起こすのは2006年の福島県立大野病院産科医逮捕事件である。事件そのものは全く異なるが、医療関係者の衝撃は共に甚だしく大きかった。

裁判官の医学的見識(鑑定)の理解度で裁判は左右されるが、医事紛争事件のような医学的な専門的知見を必要とする事件は、近年増加し、審理期間が他の民事裁判に比べて長期化している。その大きな要因は専門知識を有する鑑定人確保が困難な事にある。最高裁判所は2000年から医事関係者と意見交換をし、そこで、中立的な委員会を設けて鑑定人候補者の推薦を行う仕組みを作ることが提言され、01年に「医事関係訴訟委員会規則」が設けられた。裁判所の求めに応じて、当該医事紛争事件における鑑定人候補者の医学界(学会)の選定協力が容易となるように、委員会に、鑑定人等候補者選定分科会を置き、医療裁判の適切な判断と審理の長期化を防ぐ活動が始まった。

そもそも、医療裁判の多くは民事裁判であり、原告側の立証の基準は低い事が多い。しかし、医療行為は専門性が高く、多くは密室で行われているために勝訴するには専門性、密室性、封建制の「3つの壁」を原告側が突き崩す必要があると言われている。そこで重要となるのが「鑑定人」である。

医療裁判における鑑定人の多くは医師であるが、多忙な中、多くの時間を割いて科学的根拠に基づく鑑定を行っている。その結果は裁判に大きな影響を及ぼすが、鑑定内容を第三者に評価されることは無い。事実、裁判官も困惑するような、各々の鑑定内容が全く違う場合もある。 後日、鑑定内容を学会が学術的に評価出来れば、より良い鑑定人、より良い鑑定への近道になるかも知れない。少なくとも鑑定人が学会から評価・評定を受ける仕組みがあれば、自己中心的鑑定が生まれにくくなるかも知れない。

相原忠彦(愛媛県医師会常任理事)[鑑定内容]

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