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胸部食道癌に対する体腔鏡下手術のこれから

No.5023 (2020年08月01日発行) P.51

桑野博行  (地方独立行政法人福岡市立病院機構 福岡市民病院院長/群馬大学名誉教授)

渡邊雅之  (公益財団法人がん研究会有明病院院長補佐・消化器外科部長)

登録日: 2020-07-30

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  • 胸部食道癌に対する体腔鏡下手術は,当初の左側臥位での右胸腔を介した胸部操作のほか,その解剖生理学的特徴に基づいた腹臥位での手術も行われています。これら胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術は,「食道癌診療ガイドライン2017年版」では「エビデンスの強さC」として「弱く推奨」されています。一方,最近,縦隔鏡を用いた「非開胸食道切除術」を施行する施設もみられるようになりました。今後の「ロボット支援下手術」の普及も含め,胸部食道癌に対する手術の展開についてご教示下さい。
    がん研究会有明病院・渡邊雅之先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    桑野博行 地方独立行政法人福岡市立病院機構 福岡市民病院院長/群馬大学名誉教授


    【回答】

    【手術侵襲を軽減し,長期予後を改善する可能性がある】

    胸部食道癌に対する食道切除再建術は,消化器癌手術の中でも最も侵襲の大きなもののひとつであり,その術後合併症は短期のみならず長期予後をも悪化することが報告されています。

    体腔鏡下手術は,食道癌の手術侵襲を軽減することが期待されます。食道癌に対する体腔鏡下手術と開胸・開腹手術とのランダム化比較試験として,欧州で行われた2試験の結果が報告されています。胸腔鏡・腹腔鏡下手術と開胸・開腹手術を比較したTIME trialでは,胸腔鏡・腹腔鏡下手術群で術後肺炎の発症頻度が低く,QOLが良好でした1)。開胸によるIvor-Lewis手術における腹腔鏡下手術と開腹手術を比較したMIRO trialでは,腹腔鏡下手術群が開腹手術群に比較して30日以内の重症合併症が少なく,長期予後が良好な傾向が認められました2)

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