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続発緑内障[私の治療]

No.5022 (2020年07月25日発行) P.44

井上俊洋 (熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座教授)

登録日: 2020-07-26

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  • 続発緑内障は,疾患,外傷,薬剤など,明らかな誘因によって生じた高眼圧に伴う緑内障の総称である。緑内障の定義は別稿「原発開放隅角緑内障」に準じるが,続発緑内障の場合は他の疾患によって修飾されるため,緑内障性視神経の障害程度の評価が難しい場合がある。基本的には,少なくとも病期の一時期には,高眼圧を伴う。

    ▶診断のポイント

    高眼圧を呈するため,「緑内障」の診断は比較的容易であるが,原因を特定しなければ「続発」の診断とならない。すべての眼所見を総合的に勘案する必要があるが,眼圧上昇の原因組織を観察できる,隅角所見が最も重要である。隅角検査においては,まず閉塞隅角か,開放隅角かを確認する。

    次に,原因疾患の証拠を探す。隅角結節や局所的な周辺部虹彩前癒着があれば,ぶどう膜炎が原因となっている可能性が示唆される。毛様体帯の幅に左右差があったり,明らかな隅角後退があれば,外傷の既往を疑う。隅角に新生血管があれば,血管新生緑内障と診断する。既往の聴取も,原因となりうる現象を想定しながら行う必要がある。ステロイドの使用歴はもちろんであるが,10年以上前の眼球打撲歴は,あえて問わなければ出てこない場合も珍しくない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    対症療法としての眼圧下降治療を行うとともに,可能であれば眼圧上昇の誘因の除去が重要である。原因となる疾患があれば,その治療を行う。ステロイドが誘因と考えられる場合は,その減量・中止が可能か検討する。眼圧下降治療薬の選択は,効果が強いプロスタグランジン関連薬,交感神経β受容体遮断薬を軸に考える。追加処方する場合,同じカテゴリーの薬剤は併用できない。多剤併用となる場合は,病型と病期に適した手術による眼圧下降も検討する。

    緑内障治療薬は種類が多いため,それぞれの特性と患者のプロフィールの両者を考慮に入れる必要がある。基本的に,同じカテゴリーの薬剤間では特定の病型に対しての優位性はないが,防腐剤が異なる場合もあり,患者のアレルギー歴も十分に聴取して決定する。プロスタグランジン関連薬は禁忌が少ないが,眼瞼皮膚の色素沈着や上眼瞼溝深化などの副作用が忍容できない場合がある。また,エイベリス®(オミデネパグ)は他のプロスタグランジン関連薬とレセプターが異なるため,美容上の副作用がきわめて少ない点が有利である一方で,白内障手術後とタプロス®(タフルプロスト)との併用が禁忌である点に注意が必要である。他の緑内障点眼薬との併用も慎重に行う。交感神経β受容体遮断薬は,気管支喘息,気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患,コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(Ⅱ,Ⅲ度),心原性ショックでは禁忌である。炭酸脱水酵素阻害薬は重篤な腎障害が禁忌である。交感神経α2受容体作動薬は2歳未満を禁忌としている。2種の薬剤を1本の点眼瓶に含む配合薬は,アドヒアランスの改善のために有効であるが,それぞれの薬剤の注意点すべてに留意する。

    眼圧下降治療薬を選択する場合,原因疾患によって向き不向きがある点に注意する。プロスタグランジン製剤はぶどう膜炎症例にも使用できるが,稀に炎症を誘発する可能性があることに留意する。ピロカルピンはぶどう膜炎や血管新生緑内障の症例には推奨されず,悪性緑内障に対しては禁忌である。その他,薬剤ごとに禁忌,慎重投与があるため,確認を要する。

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