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慢性創傷のバイオフィルム対策について

No.5021 (2020年07月18日発行) P.54

石井義輝  (医療法人真鶴会小倉第一病院形成外科部長)

市岡 滋  (埼玉医科大学形成外科・美容外科教授)

登録日: 2020-07-21

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  • 慢性創傷管理において,近年バイオフィルム対策が重視されるようになっていますが,最新の状況(新しい薬剤・材料・デバイスと,それらの保険適用など)について,埼玉医科大学・市岡 滋先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    石井義輝 医療法人真鶴会小倉第一病院形成外科部長


    【回答】

    【様々な製品が新たに開発されている】

    慢性創傷において,感染の一歩手前の段階である“critical colonization”が創傷治癒を阻害する大きな要因として注目されています。バイオフィルムは,微生物が固着して形成されるコミュニティーで,糖蛋白質,蛋白質,菌体外DNAなどで構成され,細菌リザーバーとして存在し,集団を形成することで病原性を発現します。さらに,抗菌薬や宿主免疫の作用を回避することができるため,慢性炎症を引き起こし,強固な感染源となります。近年,バイオフィルムとcritical colonizationの関連性が指摘されています。

    2015年に刊行された国際ガイドライン〔欧州褥瘡諮問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel:EPUAP)/米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel:NPUAP)/環太平洋褥瘡対策連合(Pan Pacific Pressure Injury Alliance:PPPIA)〕では,「創傷が4週間以上存在している」「過去2週間,治癒の徴候がみられない」「炎症所見がある」「抗菌薬抵抗性である」などの症例では,バイオフィルムの存在を疑うよう推奨しています。しかし,バイオフィルムの存在を確定するには組織生検が必要とされ,局所所見等だけでは診断困難である点が問題でした。
    これに対して「創面ブロッティング」という技術を利用して,創面に存在しているバイオフィルムの構成成分を取り出して染色するプロダクトが開発されています。ブロッティングメンブレンを創面に押し当て,専用の溶液をかけることでバイオフィルムを可視化することができるもので,「バイオフィルム検出ツール」として販売されています。

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