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阪大・アンジェスのDNAワクチン、6月末にも治験開始─国は生産体制整備で基金設置【Breakthrough 医薬品研究開発の舞台裏(13)〈特別編〉:新型コロナウイルスワクチンの開発状況】

No.5018 (2020年06月27日発行) P.14

登録日: 2020-06-25

最終更新日: 2020-06-25

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新型コロナウイルス感染症の第2波が秋にも到来することが予想される中、国内・国外メーカーのワクチン開発に注目が集まっている。国内では阪大とアンジェスが手がけるDNAワクチンの開発が先行しており、阪大と連携協定を結ぶ大阪府の吉村洋文知事は6月17日、6月末にも医療従事者を対象とした治験を開始すると発表。一方、厚生労働省はワクチンの早期実用化のため第2次補正予算に総額1455億円の体制整備費を盛り込み、研究・開発から生産・供給までの期間の大幅な短縮を目指している。DNAワクチンをはじめとする国内メーカーのワクチン開発状況と国の支援策をまとめた。

大阪府の吉村知事と大阪市の松井一郎市長は6月16日、阪大とバイオ製薬企業アンジェスが手がける新型コロナウイルス感染症向けDNAワクチンの開発状況について阪大の森下竜一教授から説明を受け、6月30日から大阪市立大病院の医療従事者を対象とした治験がスタートする予定であることを確認した。

森下教授を中心に開発が進められているDNAワクチンは、対象とする病原体の蛋白質をコードする環状DNA(プラスミド)を接種することで、病原体蛋白質を体内で生産し免疫を付与するもの。病原体を使用しないため、安全かつ短期間で製造可能とされている。

 

「新型コロナとの闘い、反転攻勢させたい」

森下教授の話を受け、吉村知事は翌17日の記者会見で、「6月30日、(DNAワクチンの)人への投与、治験を全国で初めて実施する」と発表。「大阪市立大病院の医療従事者20~30例」を対象に投与を開始し、安全性を確認した上で、10月には「数百人規模」に対象者を拡大。国の認可を得て実用化する時期については「来年の春から秋を目指している」とした。

 

吉村知事は「国内ではこの大阪のワクチン以外にもいくつかのワクチン開発が進んでいるが、何とか国産のワクチンを開発し、日本における新型コロナウイルスとの闘いを大きく反転攻勢させていきたい」と強調。一方で、実用化には多くのハードルがあり「簡単にいくものではない」との認識も示した。

現在、国内で新型コロナウイルスワクチンの開発を進めるグループは、日本医療研究開発機構(AMED)が支援している開発主体だけで5グループある()。

最も先行しているのは、阪大・アンジェスのDNAワクチン(製造はタカラバイオが担当)。これまで「最短で7月から臨床試験(治験)開始」との意向が示されていたが、6月30日にスタートすれば、開発スケジュールがさらに早まることになる。

開発メーカーに最大250億円補助

ワクチンの開発には治験開始後も多くのハードルがある上、仮に開発に成功したとしても、生産体制を整備し広く供給できるようになるには多くの時間を要する。新型コロナのワクチンのように緊急性が高いワクチンについては、治験の結果が出る前に開発と並行して生産体制の整備を進める必要があるが、民間企業がそのリスクを負うのは困難とされている。

そこで厚労省は、ワクチンの研究開発を加速させるだけでなく、研究開発と並行して生産体制の整備を図る「加速並行プラン」を国として進める方針を表明。ワクチン開発と並行して生産体制整備を図るメーカーに対し1事業当たり20億円~250億円の費用を補助する「ワクチン生産体制等緊急整備基金」(1377億円)を2020年度第2次補正予算に盛り込んだ()。

「開発するメーカーは大半は営利企業。国としてワクチンの早期実用化を目指しているのに、リスクを民間企業に負わせるのはおかしいという議論があり、そこは国が責任を持って負担しようという話になりました」(田中義嗣 厚労省健康局予防接種室調整管理係長)

基金の設置先は現在公募中だが、補助対象の公募(第1次)もすでに始まっている(締切:6月29日)。厚労省は補助対象として5カ所程度を想定。国内メーカーのみならず、海外のメーカーが国内で生産体制を整備する場合も対象になり得るとしている。

厚労省はこのほか、2次補正の事業として接種に必要な資材(シリンジ・注射針)の確保(50億円)、速やかな接種を可能とする体制の構築(28億円)も進める。

これらの国の支援策が、開発を急ぐメーカーの動きと連動すれば、国産ワクチンの早期実用化の展望は大きく開ける。まずは第1次公募の結果に注目したい。

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