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【識者の眼】「東京世田谷区の当院におけるH. pylori除菌治療」渡邉一宏

No.5018 (2020年06月27日発行) P.61

渡邉一宏 (公立学校共済組合関東中央病院光学医療診療科部長)

登録日: 2020-06-02

最終更新日: 2020-06-01

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消化性潰瘍の再発予防にピロリ除菌は必須である。2014年、我々の地域で従来の1次ピロリ除菌法:PPI+アモキシシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM)の7日間投与では除菌率60%と壊滅的な状態にあった()。特に除菌不成功の主な原因であるマクロライド系CAM耐性ピロリ菌率は全国で2013年38.5%までになっており、当地域は、さらに耐性菌率45%程度と算出した。しかし2015年にCAM耐性ピロリ菌のみでもPPIをPCABに変更した除菌にすることで40→82%に除菌率が上昇するとの報告(村上和成:日本ヘリコバクター学会誌. 2015;17(1):8-9.)から、都市部の厳しい交差耐性菌問題もPCABの使用で、現治療法が、ある程度は容認できるようになった。制酸剤を強化することで同じ抗生剤でも除菌率が良くなるとは驚きである。現時点では1次除菌でCAMに変えてメトロニダゾール使用は保険適応外となる。

次に除菌不成功者の救済療法(保険適応外)について、2005年に日本初のニューキノロン系でガチフロキサシン(GFLX)が有効であると発表(渡辺一宏 ,他:日消誌. 2005;102:
619-20.)したが、この耐性菌が出来にくいとされたGFLXは残念なことに糖尿病患者に意識障害が発生したことで全世界の経口薬が販売中止となり消えていった。他にはベース薬のレボフロキサシン10日間(Saad RJ, et al:AJG. 2006;101:488-96.)、シタフロキサシン7〜14日間(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版)やRHB-105の14日間の3剤除菌があるが、3法とも日本では保険適応外になる。現在、当科では保険適応の1・2次除菌治療は地域クリニックにお願いすることで地域の積極的なピロリ除菌意識を高め、85歳以上のピロリ除菌は当誌文献(高橋信一, 他:医事新報. 2018;4912:24-5.)を踏襲している。

渡邉一宏(公立学校共済組合関東中央病院光学医療診療科部長)[内視鏡医療における地域貢献][上部消化管内視鏡止血⑤]

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