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【識者の眼】「医師の働き方改革は進んでいるか」猪俣武範

No.5014 (2020年05月30日発行) P.67

猪俣武範 (順天堂大学医学部眼科学教室、戦略的手術室改善マネジメント講座、病理管理学、准教授)

登録日: 2020-05-15

最終更新日: 2020-05-15

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2017年8月から2019年3月まで厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」に構成員として参加しました。4年後の2024年4月に始まる時間外労働規制の適用に向けて、医師の働き方改革は進んでいるのでしょうか?

医療機関は2024年までの間に、①医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み、②36協定等の自己点検、③産業保健の仕組みの活用、④タスク・シフティング(業務移管)の推進、⑤女性医師等の支援─の5つの項目のほか、医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組みを推進する必要があります。しかし、これらの取り組みはどれも費用がかかるものであり、実情として医療機関が置かれる状況は厳しくなっていくばかりです。

しかし、医師の働き方改革推進に向けて厚労省は2020年4月から診療報酬を改定しました。そこでは、勤務が過酷な救急医療に対する報酬や、看護師や、医師の事務作業に対する補助職員配置などの業務分担に対する報酬などが拡充されました。これは病院の厳しい勤務環境を改善する取り組みに対して評価する改定と考えられます。診療報酬は国民負担であることからも、医療機関側は働き方改革にさらに真剣に取り組むべきです。

また、医師の働き方改革は、医療提供者だけで完結するものではありません。行政、企業、患者・市民が一体となって、国民の医療との関わり方を改善し、患者・市民の不安を解消し、医療提供者の働き方も変わっていく取り組みを総力戦で進める必要があります。持続性のある医療提供体制のためには、医師も1人の人間であり、健康確保が必要であることを理解した上で、医師と、国民が受ける医療の双方を社会全体で守っていくことが重要なのではないでしょうか?

猪俣武範(順天堂大学医学部眼科学教室、戦略的手術室改善マネジメント講座、病理管理学、准教授)[医師の働き方改革]

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