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【識者の眼】「中規模民間病院における新型コロナウイルス対策」伊藤一人

No.5012 (2020年05月16日発行) P.59

伊藤一人 (医療法人社団美心会黒沢病院病院長)

登録日: 2020-04-30

最終更新日: 2020-04-30

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2020年4月27日現在の群馬県内の新型コロナウイルスの感染症数は117人と増加傾向で、人口比では0.006%と、東京都の0.028%と比べて感染者率は低くなっています。車社会の群馬県は人との接触頻度が東京の約1/5である結果と考えます。しかし県内感染症指定医療機関のベッドは逼迫しており、公立病院を中心に受け入れ体制拡充中ですが、対応困難な事態が間近に迫っています。

当院は病床数130床の中規模民間病院で、透析患者200人以上を抱え、泌尿器科と脳外科を中心に急性期を維持し、病棟担当内科医は少ない現状です。ICTが院内感染対策にあたっていますが、行政より中等症以下の肺炎症例の入院要請を受ける可能性があり、民間病院として以下のような問題に直面し、限界も感じています。

①陰圧室3室の隔離ベッドが現状での物理的・人的見地からの最大限、②感染症専門家が不在のため、より慎重な環境整備が必要:例えば専用看護ステーション設置、遠隔バイタル監視装置導入と監視カメラ新規設置による不要な患者接触の回避など、③院内感染拡大リスク回避のため専属医療チーム選任と家庭内感染予防のための住居準備、④人工呼吸器管理が困難な現状を踏まえ、入院時に倫理規定に沿った、重症化の際の対応に関する意思確認のための同意説明文書の準備、⑤感染症専門家・保健所による物理的・人的整備指導、⑥実施中の発熱外来の体制維持のためのPPEの公的補助依頼、⑦入院受け入れ時の大幅な他疾患診療制限による経営状況悪化に対する公的資金補助、⑧新型コロナウイルス感染症診療に携わる医療関係者の危険手当、感染時の重症度に応じた公的保証、⑨アビガン使用準備(臨床倫理審査委員会の承認手続き)─など問題が山積です。

民間病院の経営悪化による地域医療崩壊に陥らないため、行政からの入院要請と同時に保証は必須です。また、自己防衛は重要で、日々激変する状況ですので、即断が必要な検討課題があれば感染対策委員会を随時開催(現在週3〜4回)し、万全の対策をしています。

伊藤一人(医療法人社団美心会黒沢病院病院長)[新型コロナウイルス感染症]

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