株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

標準採血法ガイドラインGP4-A3[ガイドライン ココだけおさえる]

No.5008 (2020年04月18日発行) P.52

大西宏明 (杏林大学医学部臨床検査医学教授)

登録日: 2020-04-20

最終更新日: 2020-04-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 総論:本文において推奨の強さの表現を統一した。また,ガイドラインの位置づけを明確化した

    2 ホルダー採血法と注射器採血法の選択基準について明記した

    3 翼状針を用いた採血法の特徴(神経損傷のリスクを低下させることなど)について詳述した

    4 採血手技が血液検査の測定値に与える影響について,補遺として追加した

    5 図表・データ・文献を充実させた

    1 総論

    採血法の標準化を推進するため,2004年7月,日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)は「標準採血法ガイドライン試案(Tentative Guideline,GP4-T)」を発行した。その後,2006年11月に成案(Approved Guideline)第1版(GP4-A1),2011年1月に成案第2版(GP4-A2)と2度の改訂版の発行が行われた。前回の改訂から8年が経過し,採血に関する新たなエビデンスの報告や,採血器具の普及,さらには諸外国におけるガイドラインの発行・改訂など,採血法を取り巻く状況の様々な変化がみられたことを受け,2019年3月に改訂第3版(GP4-A3)が発行された(表1)1)。本稿では,最新のガイドラインにおける改訂のポイントについて解説する。

    採血法に関する客観的なエビデンスは十分でない部分が多いこともあり,本ガイドラインは経験的な合理性,わが国の医療事情,入手可能な医療器材の性能,経済的な効率なども考慮し,専門家のコンセンサスに基づき作成されている,いわゆるconsensus-based guidelineとなっている。そのため,通常のガイドラインにみられるような,エビデンスの強さに基づいた推奨レベルを表示する形式はとっていない。しかし,今回の改訂にあたっては,推奨の強さをわかりやすく示すため,以下の3段階に推奨の強さの表現を整理し,統一した。

    ①「~しなければならない」「~してはならない」:法律・製品規格上の要請や,あるいは違反したときに生じる結果の重大性から,やむをえない稀な状況を除き,すべての場合に遵守することが求められる。
    ②「~する」:わが国の医療慣習や経験上,あるいは教科書的記述に基づき,あるいは複数のかなり確実性の高い文献的証拠から,大部分の状況において実施することが求められる。
    ③「~するのが望ましい」:わが国の医療慣習や経験上,あるいは文献的証拠から,実施することが推奨されるが,状況によっては別の手技を行うことも選択肢となる。

    これにより,状況に応じてどのような採血法をとるかについて,推奨の強さを参考にして決めることができるようになった。

    なお,これまでのガイドラインには小児の採血に関して言及する部分も含まれていたが,改訂版ではその部分を割愛し,成人の静脈採血に関する内容であることをより明確にした。

    一方,輸液ルートからの採血(いわゆる逆流採血)は近年多く行われているが,逆流採血の最後に行われる生理食塩水等によるルートの洗い流し行為は,臨床検査技師の職務範囲を超えるものである。この輸液ルートからの採血における注意点が新たに追記された。

    本ガイドラインはあくまで静脈採血に関する標準的な指針を提示したものであり,個々の症例についての採血手技の選択は,最終的には採血者の状況判断に基づいて行われるべきものである。改訂版では,この点についても緒言で明記し,ガイドラインの使用について注意を促している。

    残り2,026文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top