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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染拡大によるオンライン診療初診の具体的運用」黒木春郎

No.5009 (2020年04月25日発行) P.60

黒木春郎 (外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)

登録日: 2020-04-13

最終更新日: 2020-04-13

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 厚生労働省は4月10日に「新型コロナウイルスの感染拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」との事務連絡を発出した。これにより、初診のオンライン診療が解禁された。感染は拡大しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を識別し、発熱・呼吸器症状を有する患者を診察する医療施設は限られている。これが地域医療の現状である。現場の医療者の疲弊は著しい。また、感染症指定病院等、COVID-19の患者の診療にあたる医療施設では、医療従事者への負担が大きく、ベッドコントロールも限界にきている。オンライン診療初診の解禁はこうした点の解決を目指したものだ。また、「新型コロナウイルス感染が心配で医療機関に行けない」と不安の中にあり、受診控えに陥っている住民にとっても朗報であろう。

具体的な運用に関して、いくつか述べさせていただく。

1. 自分がCOVID-19ではないかと心配する患者に対して

こうした患者への対応が、地域医療で現在最も苦慮されるところであろう。オンライン診療は非対面であり、医療者への感染はあり得ない。そして、この非対面診療の役割は、重症例の選別に尽きると思われる。非対面でも全身状態、呼吸障害の把握が十分可能である。BMJからのガイド「Covid-19:a remote assessment in primary care」を紹介する(https://www.bmj.com/content/368/bmj.m1182)。

2. COVID-19(PCR検査陽性者)の外来フォローについて

患者が増加した地域では軽症者の自宅ないし施設での待機が決まった。このフォローにオンライン診療は有効である。入院での担当医とオンライン診療担当医が緊密に意思疎通をしておけば、入院担当施設の負担は大幅に減らせる。退院時に酸素飽和度モニターを貸与することがよいだろう。オンライン診療可能な施設の一覧は私が発起人となり、日本医療ベンチャー協会の協力を得て作成し、3月27日に公開している(https://docs.google.com/spreadsheets/d/1FurZ-wC1br78T5PkN8YNkIMWlwe6RWoCkM07biy0D7k/edit#gid=1399629391)。入院担当医はこの中から、COVID-19を外来で診察できる専門性のある施設を選んでいただけばよい。

COVID-19対策に関して、米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインではtelemedicineが第一に取り上げられている(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/infection-control/control-recommendations.html)。また、NEJM誌でもtelehealthの活用に言及している(https://catalyst.nejm.org/doi/full/10.1056/CAT.20.0079)。先のBMJではプライマリケアでの利用の具体的なフローチャートも用意されている。世界はこのコロナ禍中に、オンライン診療を積極的に活用している。(2020年4月12日記)

黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)[新型コロナウイルス感染症][オンライン診療]

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