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【識者の眼】「新型コロナウイルス流行下における小学校・中学校の再開と休校の考え方」和田耕治

No.5008 (2020年04月18日発行) P.62

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-04-06

最終更新日: 2020-04-06

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今回は厚生労働省専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(4月1日、https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617992.pdf)を参考に、小学校と中学校の再開と休校の考え方をご紹介します。まず提言の「学校」に関連する記載は下記です。

「現時点の知見では、子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている。したがって、学校については、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である。また、子どもに関する新たな知見が得られた場合には、適宜、学校に関する対応を見直していくものとする」

まず、「地域」をどうとらえるかです。「生活圏」という言葉がポイントです。小学校、中学校の生活圏がどこなのかを考える必要があります。その生活圏における、過去1〜2週間の新規感染者数を確認します。つまり、都道府県の中で必ずしも一律とは限らないことに注意が必要です。

教育委員会や市町村の意思決定者にとっては休校の方が、学校で感染拡大などが起きた場合の責任から逃れられるので、安易にとられやすい選択肢になることを危惧しています。子どもたちにとって学校はとても大事な場です。できるだけ学校を、感染対策を十分に、慎重にしつつ、続ける方向性を捨てないでいただきたい。

私は小学校や中学校のレベルで話し合いをしていただくのも良いのではないかと考えています。学校を閉じることの利点と欠点を学校医の先生なども交えて考えてみる。これに関するエビデンスが少ない以上、皆で話し合うしかありません。

学校をいったん閉鎖した場合には、今後の再開の意思決定も難しいでしょう。流行は年単位で続きます。流行状況は地域によって様々です。安易に学校再開を遅らせると、今後は今よりも悪くなる可能性が高いので、1年間再開できないということになるかもしれません。

以前、ある市の保健担当の方から聞いた言葉が思い出されます。「インフルエンザの流行に伴い、『どうして学級閉鎖をしないんだ』という電話は何度もかかってくるが、『どうして学級閉鎖をしたんだ』という電話がかかってきた記憶がない」と。そうした状況も含めて、最終的な意思決定者になるであろう市町村の首長や議会の皆様も含めて判断が難しい状況は続くでしょう。

最後にもう一度、報告書から引用します。「現時点の知見では、子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている」

※2020年4月6日の情報を基にしています。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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