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3年目の石巻訪問記[長尾和宏の町医者で行こう!!(38)]

No.4698 (2014年05月10日発行) P.12

長尾和宏 (長尾クリニック)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 去る3月26、27日、石巻市立病院さんのお招きで講演することになり、3年ぶりに2泊3日で石巻市にお邪魔した。第一に気がついたことは、最寄りの仙台空港と、飛行機やホテル、レンタカーなどが、復興関連と観光客で満員だったこと。春休みと重なったせいもあるだろうが、結構な賑わいだった。
    日和山公園から見下ろした景色は、海岸線まで何もなかった。石巻市立病院もない。海岸に近い場所は公園になる予定だという。現在は住宅の再建は禁止されている。19年前の阪神大震災の時もそうだったが、そこに自分の土地があっても家を建てられないというのは当事者には本当に辛い。当時、区画整理の話し合いを重ねているうちに亡くなった自治会長さんを思い出した。石巻でも同じ悲劇が繰り返されないことを祈った。

    朝からこの公園に来ていたのは観光客ばかりだった。しかし観光目的でもなんでもいい。寂しいより賑わっているほうがいい。地域経済も潤うので足を運ぶこと自体が復興支援になる。今後もなんだかんだ理由をつけて被災3県に足を運ぼう、と思った。

    開成仮設住宅と仮診療所

    広大な開成仮設住宅とその一角にある石巻市立病院開成仮診療所を訪ねた。ここでは、佐久総合病院から石巻市立病院の仮診療所長に身を転じた長純一医師が、ちょうど午前中の診療をされていた。新病院建設までの間は、この仮診療所でつなぐそうだ。外来診療の合間には、仮設住宅の在宅医療も行われているとのこと。まさにミックス型診療所である。

    仮診療所の真横には、2月に開設したばかりの石巻包括ケアセンターが並んでいた。復興庁からの職員も常駐していた。ちょうど地域の保健師、地域包括スタッフ、社会福祉協議会、行政などが検討会をやっていた。個々の在宅事例が報告され、多職種間の情報共有が図られていた。傍聴しながら、これぞ「地域包括ケア」の芽生えであると感じた。

    その後、これまた一角にある地域食堂「あがらいん」で昼食を取った。地元の食材を活かした定食が500円で提供されていた。そこには仮設住宅の入所者はもちろん、来訪者、診療所のスタッフも一緒に食事をしていた。筆者は日頃から、「つどい場」で「まじくる」(=いっしょくたになる、ごちゃまぜになるという意味の造語)の必要性を提唱しているが、このあがらいんは見事に「つどい場」であり、皆さんまさしく「まじくって」おられた。

    開成仮設住宅は間違いなく「地域包括ケア」のひとつのモデルである。被災地は、今後ますます重要性が高まる連携のモデルになり得ると確信した。

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