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【識者の眼】「RSウイルスの流行が夏?冬の風物詩はいずこへ?」矢吹 拓

No.5000 (2020年02月22日発行) P.47

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)

登録日: 2020-02-21

最終更新日: 2020-02-20

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冬になってくると様々な疾患が流行したり発症しやすくなったりする。感染症だとインフルエンザやノロウイルス、感染症以外では心不全や心筋梗塞、外来ではレイノー症状の訴えもみられるようになる。

そんな中、近年流行時期の変化を感じている疾患がある。それは小児のRSウイルスだ。当科では、毎週県が報告している感染症流行情報を参照しているが、ここ数年RSウイルスの流行時期が以前と比較して明らかに前倒しになっているのを実感している。

筆者が小児科研修を行っていた2000年代はRSウイルスの流行は冬期であることが特徴で、秋頃から始まり年末にかけてピークに達して春まで続くというのが一般的だった。ところが、2016年は8月上旬からRSウイルス感染の流行が見られ、本来のピーク時期である年末にはほぼ収束していた。また、2017〜19年には7月上旬から流行が見られ、ピークが9月となっており、かなり早期に流行が見られている。冬に流行していたウイルスが夏に流行するウイルスに変わりつつあるという大変興味深い現象が起こっているのだ。

原因はよく分かっていないが、地域差や年度差が大きく温暖化などの影響はあるのかもしれない。また、日本小児科学会の「日本におけるパリビズマブの使用に関するガイドライン」(2019年4月)では、低出生体重児に対するパリビズマブ(シナジス)の投与開始時期の推奨もこの季節変動が考慮されている。
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20190402palivizumabGL.pdf

今後の動向に注意が必要だが、流行時期が変化してきており、もはや冬の風物詩とは呼べない状況にあることは理解しておくとよいだろう。

矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科医長)[冬の風物詩][RSウイルス]

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