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【識者の眼】「『総合診療』の多様性は最大の魅力であり不安の要因」塩尻俊明

No.5000 (2020年02月22日発行) P.60

塩尻俊明 (地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)

登録日: 2020-02-20

最終更新日: 2020-02-19

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「総合診療」という言葉自体は、世の中に定着してしばらく経つ。はたしてその実態はどうであろうか。新専門医制度の開始から3年目を迎えるが、新たな専門科となった総合診療科への応募者は200名を超えることはない。この伸び悩みには、いくつかの要因があるかと思うが、1つにはキャリパスが見えにくいということであろう。「総合」という言葉は、多様性を意味するものでもあり、それが良さでもあり、「総合診療」をわかりにくくしている理由でもある。現在のいわゆる「総合診療」は、クリニックベース、病院ベース、救急ベースの3つに分かれていると思う。また、病院ベースや救急ベースであっても病院によって環境がかなり違っているため、「総合診療」の守備範囲も同じではない。

病院の総合診療には、大学病院に代表されるような病院外来中心の形のほかに、病棟診療を併せて持つ施設もある。どの科にかかるべきか、どういう診療が適切なのかを見きわめて、他院で診断に難渋して紹介されてくる診断困難例などの診療を行う。小〜中規模病院での総合診療は、各科専門医を十分な人数確保できている病院ばかりではないため、幅広い疾患の入院・治療まである程度自分のところで完結する形をとる。大規模市中病院では、大学病院の外来型の総合診療部門に小〜中規模病院の入院診療が合わさった型で、救急外来も担当し、かつ大学病院のように診断困難症例も自分のところで最後まで見切るような形をとる。いくつかの専門科にまたがる複数の疾患を持つ患者、緩和ケアが必要な患者、内科管理が必要な他科患者なども守備範囲に入ってくる。

このように病院総合診療の多様性は、さまざまなキャリアパスを組めるという最大の魅力である。ただ若手医師には、それぞれの研修プログラム提示や会得できる資格の定義が途上であるためキャリアパスをわかりにくくし、そして不安にさせているのも事実である。

塩尻俊明(地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)[総合診療]

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