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【識者の眼】「アトピー性皮膚炎の新薬デュピルマブの効果」大塚篤司

No.5000 (2020年02月22日発行) P.57

大塚篤司 (京都大学医学部外胚葉性疾患創薬医学講座特定准教授)

登録日: 2020-02-20

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アトピー性皮膚炎は本邦で約45万人、小学生の10人に1人が罹患しているアレルギー疾患である。アトピー性皮膚炎の原因は複合的であるものの、いくつか有力な原因が報告されている。まず1つ目が、バリア機能の破綻である。表皮に発現するフィラグリンは、バリア機能に重要な役割を担う蛋白質だ。フィラグリンはいくつかの酵素で分解された後、天然保湿因子として角層で働く。一部のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、このフィラグリン遺伝子に変異があることが報告されている。また、遺伝子変異がなくともフィラグリンの蛋白発現量が減少していることから、バリア機能が弱く水分量が少ないのがアトピー性皮膚炎患者さんの特徴だ。

フィラグリンの蛋白発現はTh2サイトカインの影響を受ける。Th2サイトカインの過剰な亢進がアトピー性皮膚炎の2つ目の原因でもある。最近、IL-4受容体をブロックする生物学的製剤が登場した。デュピルマブだ。デュピルマブはIL-4受容体を阻害するため、IL-4とIL-13の両方のシグナルを抑える。興味深いことに、このIL-4受容体は皮膚の末梢神経にも発現している。つまり、アトピー性皮膚炎の3つ目の原因となるかゆみにもTh2サイトカインが関与していることになる。

我々は、デュピルマブがアトピー性皮膚炎のかゆみを早期に抑えることを見出した(未発表データ)。これはデュピルマブが末梢神経に発現したIL-4受容体をブロックし、サイトカイン誘発性のかゆみを抑えることによるだろう。ちなみに、海外のグループはデュピルマブがTh2サイトカイン誘発性のバリア機能破綻を抑えることも報告している。

このようにアトピー性皮膚炎の新薬は、バリア、免疫、かゆみの3つをすべてブロックすることで効果を発揮する強力なツールとして臨床現場で活躍している。 

大塚篤司(京都大学医学部外胚葉性疾患創薬医学講座特定准教授)[皮膚科]

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