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【識者の眼】「2つの不妊治療と生殖補助医療」片桐由起子

No.5000 (2020年02月22日発行) P.55

片桐由起子 (東邦大学医学部産科婦人科学講座教授)

登録日: 2020-02-20

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性成熟期の男女が避妊をしない性交渉をして、一定期間妊娠が成立しない場合を「不妊症」というが、日本産科婦人科学会では、この一定期間を「1年」と定義している。不妊治療では、まず、不妊原因を明らかにしてそれぞれのカップルにふさわしい医療が提供されることになる。

不妊治療は大きく2つに分けられる。1つは、明らかとなった不妊原因を治療あるいは改善させ、妊娠しやすい身体にすることであり、もう1つは、不妊原因の治療や改善が困難で、不妊原因が存在する状態でも医療が介入することにより妊娠の成立を目指すものである。勿論、前者がより望ましく、多くの不妊症カップルが不妊治療の入り口で抱くイメージも前者である。しかし、実際の不妊治療では後者となる場合が多い。例えば、排卵障害がある場合、排卵誘発剤が使用されるとか、精子濃度が低かったり運動率が不良であったりする場合、運動良好精子を濃縮して子宮内に注入する人工授精を実施するなどである。その一つが、他の方法で妊娠が成立しないあるいは成立が困難であると推測される場合に選択される、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)あるいは特定不妊治療と呼ばれる体外受精(in vitro fertilization:IVF)/顕微授精(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)-胚移植(embryo transfer:ET)である。

ARTは1978年にイギリスで初めて成功し、以来40余年の間に目覚ましく発達し、全世界で800万を超える児が誕生し挙児希望に貢献している。しかしその一方で、技術が母児に及ぼす影響の可能性に対する検証や、それまでには考えられなかった医学的/社会的親子関係への検討など、取り組むべき課題が生じている。

片桐由起子(東邦大学医学部産科婦人科学講座教授)[生殖医療]

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