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【識者の眼】「支える人も支えられる必要がある」中野智紀

No.5000 (2020年02月22日発行) P.27

中野智紀 (北葛北部医師会在宅医療連携拠点菜のはな室長、東埼玉総合病院)

登録日: 2020-02-24

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当地域の医師会では介護保険事業を根拠として、2012年度から在宅医療連携拠点菜のはな(以下、菜のはな)を設置している。在宅医療や介護の枠に留まらない多様な世代の多様な生活問題の相談に応じている。

ある日、70代の男性が抑うつ気分を訴え菜のはなに連絡、その後、筆者の外来へ紹介されてきた。彼は、病気のため通院が必要な患者の付き添いを有償ボランティアとして引き受ける活動を続けてきた。最近では、透析療法が必要な患者の通院に付き添うことが多かった。長らく通院の付き添いを行ってきた患者の中にはADLが低下し、身体介護が必要となる者も少なくない。やがて、介護保険によるサービスを受けるようになると長年寄り添った関係が切られることになる。また、以前から気にかけていた高齢者がいた。彼はこの高齢者の買い物を代行する有償ボランティアを行っていた。高齢者はヘビースモーカーであったため、彼は再三にわたり禁煙をするように注意を促してきた。しかし、男性が喫煙を止めることはなかった。最近、この男性が自宅で孤独死の状態で発見されたと報告を受けたという。以上のように、抑うつを訴えて来院した男性は喪失体験を繰り返し経験し、その後に抑うつ症状を認めるようになった。我々、医療従事者も同様の経験をすることがあるが、少なからず支援体制はある。カンファレンスなど辛い経験をチームで向き合い、ケアを受け受容していく。近年、「支え合い」や「互助」の重要性が叫ばれて久しいが、支援を行う人々には支援が必要とみなされない。

菜のはなでは、こうした地域の支え合いの主体となっている住民らを支援するために、「みんなのカンファ」と呼ばれるピアサポートグループを運営している。自治会やサロン、地場産業やボランティアなど様々な地域における支援の担い手たちは、様々な問題を抱え込んでいる一方で、支援の対象とは見なされていない。支援する人たちほど、支援を必要としているものである。今回、来院された男性はみんなのカンファに参加した後、再び元気を取り戻して有償ボランティアに復帰している。

中野智紀(北葛北部医師会在宅医療連携拠点菜のはな室長、東埼玉総合病院)[コミュニティドクターの地域ケア日誌②]

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