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【識者の眼】「病院再編、解決の糸口は“地域医療=急性期医療”の発想を改めること」小林利彦

No.5000 (2020年02月22日発行) P.23

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-02-24

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2019年9月26日に国(厚生労働省)から公表された「再編統合に向けて再検証が必要な公立・公的医療機関等(424施設)」の問題は、年が明けてもいまだ全国各地で大きな話題となっている。厚労省は、年末(12月24日)の「国と地方の協議の場」で一定の理解は得られたとの判断のもと、再編統合事例のある区域を地域医療構想上の「重点支援区域」として申請させ、地域の調整会議に自ら赴く姿勢を改めて表明したが、一連の問題がすぐに解決されるとは思えない。

そもそも、病院や病床等の再編統合が議論になる背景には、人口減少が著しく進んでいる本邦において、(予測される)入院患者数に比して病床数が過剰であるという事実がある。実際、経年的にも入院受療率が低下してきている状況下、国の資料によれば、2017年の既存病床数と2025年に必要な病床数の差は約13万床とされている。また、地域医療構想における病床の必要量は一般病床と療養病床を対象としたものであるが、昨年の公表で「公立・公的医療機関等」がやり玉にあがった一番の理由は、それらの施設に対する「繰入金等」の問題であることは間違いない。しかしながら、国から再検証が必要であると名指しされた根拠が、自施設内に高度急性期または急性期病棟を一部でも有していたことと、あくまで国が定義した「急性期医療の実績水準」からの逸脱であったことから、中途半端な議論と不毛な対立を招いてしまったものと考える。

本来、民間病院であれば、経営的に成り立たない病院運営を長く続けていくことはできない。その一方で、公立・公的病院に対して、いつまでも多額な財政支援が可能な市町村ばかりではないはずである。「公立・公的vs民間」といった対立軸を解き、地域医療=急性期医療といった短絡的発想を改めることからしか解決の方向性は見えない気がする。地域によっては、行政が民間病院を支援することがあっても良いはずである。また、ヘルスケアという視点では、市町村行政も、医療に偏重したこれまでの姿勢を大きく改め、介護福祉サービスとの連携・協働を考えていくべきであろう。

いずれにせよ、その種のデータは独り歩きしやすいことを理解した上で、地域で軸をぶらさずにヘルスケアを導いていける人材の確保と育成が望まれる。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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