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【識者の眼】「オンコールの負担軽減を望む」荒木優子

No.5000 (2020年02月22日発行) P.33

荒木優子 (共永総合法律事務所・弁護士)

登録日: 2020-02-23

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医師の勤務の特徴としてオンコールが挙げられます。病院により「宅直」「待機」「当番」「ファースト」「セカンド」「拘束」など様々な呼称があるようです。

オンコールの場合、呼ばれた際に速やかに病院に駆け付けられるよう病院から一定の範囲内に居ることが求められ、いつ電話がかかってくるか予測ができないため携帯の着信を気にしながら1日を過ごすことになるのではないでしょうか。そのため常に緊張感があり負担に感じている勤務医も多いと思います。 筆者には勤務医から、病院からいつ着信があるか分からないため、入浴中も携帯が手放せないという声が届いています。

オンコール待機中の時間が労働時間に当たるか否かが争点になった判例として、産婦人科医らが宅直当番日の待機時間を労働時間であると主張して割増賃金等の支払いを求めた県立奈良病院事件(最判平成25年2月12日)があります。 この事案では、宅直制度が産婦人科医らの自主的な取組みと認定され、病院が明示または黙示の業務命令に基づき宅直勤務を命じていたものとは認められず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができないとされ、宅直当番日の待機時間は、労働時間に当たらないと判断されました。

この事案は、宅直当番を産婦人科医の医師らが自主的に決めていたというやや特殊なケースで、病院がオンコール当番の医師を決める一般的なオンコールとは事情が異なります。そのため病院の業務命令に基づいたオンコールの場合、待機時間も含めて労働時間と認定される余地もあると考えられます。 また、主治医制の場合には、オンコールの当番日か否かに関係なく24時間365日、病院から主治医に問い合わせなどの電話がかかってくるという実情もあると聞いています。

24時間365日、病院から携帯にかかってくる電話は、オンオフの切替えが難しく、勤務医の当直を挟む長時間労働に匹敵するかそれ以上に負担という声も聞かれます。勤務時間外に勤務医にかかってくる電話の問題については、多くの勤務医が負担と感じている問題であり、その負担が軽減されることを望みます。

荒木優子(共永総合法律事務所・弁護士)[医師の働き方改革]

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