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【識者の眼】「外科技術の適正な診療報酬を学術的に検討する外保連」岩中 督

No.5000 (2020年02月22日発行) P.36

岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)

登録日: 2020-02-22

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いつでもどこでも誰でも低コストで医療が受けられる国民皆保険制度が1961年に導入され、公的保険の保険者から医療機関に支払われる医療行為の対価である診療報酬は、全国一律の料金体系になった。今でこそ世界に類を見ない医療制度と評価されているが、当時はそれまで行われていた自由診療と比べ、医師の診療を制限する窮屈な制度と受け止められた。また、どこの病院で手術を受けても、誰の手術を受けても手術料は同じとなったが、手術料金は誰がどのように決めているのか、ほとんどブラックボックス状態であった。この算定根拠がはっきりしない当時の手術料に科学的根拠を与え、外科系診療における適正な診療報酬を学術的に検討することを目的に、日本外科学会を中心とする9学会の有志たちが、1967年に外科系学会社会保険委員会連合(以下、外保連)を立ち上げ、手弁当で15年間にわたる議論の後、1982年に外保連手術試案を上梓した。

試案の詳細は来月の次稿に譲るが、改訂を重ねた現在の手術試案9.2版は、約3800件の手術術式を収載している。また、1998年には処置試案、生体検査試案が、2011年には麻酔試案が、2017年には内科系学会社会保険連合(以下、内保連)とともに内視鏡試案がそれぞれの委員会のもとで発刊された。

外保連は社会保険委員会連合であり会員は学会である。その主たる活動は、各学会からの医療技術の様々な提案を取りまとめて、厚生労働省保険局と意見交換し適切に要望を通すことである。手術試案を中軸とした外保連試案が、2010年の診療報酬改定の際に中央社会保険医療協議会の遠藤久夫会長(当時)より、「医療技術に関して明確な算定ルールがない中で、唯一の一定の説得力を持つ客観的な価格表」「今後の外科技術の評価はこの試案を参考にする」とお墨付きをいただいたことから、外保連への期待は激増し、2019年時点で加盟学会は108を数えるまでになった。次稿では、外保連試案について詳述する。

岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連試案]

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