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【識者の眼】「問題スタッフの安易な解雇は危険、関係改善の糸口はコミュニケーション」川﨑 翔

No.4999 (2020年02月15日発行) P.64

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)

登録日: 2020-02-17

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はじめまして。弁護士の川﨑翔と申します。医療機関やクリニックの顧問弁護士を行う傍ら、実際に皮膚科クリニックの理事として経営に参加し、診療報酬の請求を含めたいわゆる事務長業務をしています。

さて、今回は、「問題スタッフとの関係」についてお話をしたいと思います。

顧問先のクリニックからは「院長の指示に従わない問題スタッフがいる」「協調性に欠けるスタッフがいて困っている。早く解雇したい」というご相談を度々いただきます。

しかし、クリニックに合わない人材であるという理由で解雇することはきわめて危険です。実は「解雇」が裁判上有効と判断されるケースはきわめてまれです。安易に解雇に踏み切ってしまうと、解雇無効の訴訟を起こされるなどして、裁判が終了するまでの給与を支払わなければならないというリスクさえあります。

解決の糸口は「コミュニケーション」にあると感じています。

「問題スタッフ」と指摘されている人も、クリニックとの関係がうまくいっていない点は当然認識しています。ただ、お互いに「相手のせいでうまくいっていない」と考えています。人間、どうしても「不都合な真実」に目をそむけたくなるものです。

まずスタッフには、日報等で日々の業務を振り返ってもらうことが大事です。そして、クリニック側からひとつひとつコメントをつけましょう。私のような第三者がスタッフと直接面談するという方法も有効です。そうすると、徐々に問題点が可視化されてきます。日報や面談で自分の働きが客観化されると「不都合な真実」に直面せざるを得なくなります。

この方法で、スタッフの意識が変わり、働きが改善するというケースも少なくありません(先日も、私が面談をした後、徐々にではありますがスタッフの方が意欲的に働き始めたというケースがありました)。そうでなくとも、スタッフが求められている働きができていないことを認識して辞めていく例が多いです。

「コミュニケーション」という遠回りに見える方法が、実はクリニックの安定経営の近道です。

川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]

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