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【識者の眼】「産業医のための、外国人を含む不特定多数と接する一般企業の感染対策」和田耕治

No.4999 (2020年02月15日発行) P.61

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-04

最終更新日: 2020-02-04

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一般の企業の中でも、不特定多数や特に外国人客と接触するお店の職員などの感染対策はなかなか難しいので、今回、具体的事例をご紹介します。
例えば薬局ですと、多くの中国人がマスクなどを買いに来ているようです。また、中国人アルバイトも多いです。

ある企業では、今の段階から、日本人も含めて朝に体調確認と発熱がないことを自分で確認して出勤してもらうようにしました。出勤後には体温測定と症状がないことを職場で確認し、記録をつけています。熱の基準は37.5度で、それ以上なら原則休暇をとるようにし、体温がそれ以下でも体調に応じて判断します。店舗などで発熱している人が2名を超えた場合には本部に連絡し、例えば同じ店舗で2名が発熱などで同じ日に休んだ場合には、追加の対応を考えることを想定しています。場合によっては店舗の一次閉鎖なども視野に入りますが、周りのお店や地域の風評につながることも考慮しなければなりません。

このほか、手洗いを徹底し、出勤した際(満員電車などに乗った後)、昼食前、退勤前に励行しています。また、お客さんで咳をしているような人がいたら、他のお客さんへの対策も含めてマスクを装着するように促すこととし、職員のマスクの装着も許可しました。

中国から来た職員が対応することに不安を感じる日本人客もいるようです。そのため、クレームがあった場合には、職場として発熱がないことなどの確認をしていること、日本人も含めて職員全員が念のためマスクを着用していることをお伝えし、それでも気になる方には、日本人が対応します。一方で、中国から来た方の対応をしたくないという日本人職員もいるようです。

職員の情報発信にも注意が必要です。不安や企業への不信感があると、SNSで職員が不用意に発信しかねません。たとえば、「発熱した。中国からの人の対応が多くてコロナかもしれない」といったことなどを発信すると、風評被害にもつながります。

今のところ、中国からの感染がメインですが、国内にも感染が広がる可能性があります。次に騒ぎが大きくなるのは、国内での日本人の感染例が多数発生した時、そして、日本人の死亡者が出た時でしょう。

マスクの国内在庫もかなり減ってきており、今後こうした状況になるとマスクがなくて不安になる人も出るかもしれません。海外では、元気な人はマスクを買わないでと呼びかけているようです(咳エチケット用に確保するため)。そのためマスクを念のため使うということも今後困難になるかもしれません。

(著者注:2020年2月4日の情報を基にしています)

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症に備える]

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